2017年4月30日日曜日

電光石火作戦

ウルトラマンの舞台設定とは。有事の防衛軍基地と荒廃した難民生活区なウルトラセブンとは打って変わって。安全な近未来都市とそれを保障する郊外のライフライン供給施設とで成っている。郊外のライフライン供給施設には科特隊日本支部基地のような防衛拠点なども含まれる。基本。平和なので郊外のそれらの施設に於いては都市部からの子供達の社会見学なども行われる。ホシノくんの基地への自由な出入りはそうしたウルトラマン特有の事情にも依っている。都市部に関しては近未来科学技術で高度なセキュリティが保たれているが。その分。郊外のライフライン供給施設への大規模化。負担増。職務激化といった事態は否めなくなっている。本作など。そうした事情下でヒトタビ怪獣が出現すると。人類滅亡的スケールな被害に至るといったウルトラマン特有のトンデモな世界をシミュレーションチックに現出させていて興味深い。いい換えれば。ウルトラマンの世界観とは。ウルトラqと地続きでアンバランスだが平時といえばいえる。事件は生活空間というより浄水場とか精油所とかウラン貯蔵庫とか無機空間で限定されて基本。庶民を巻き込まず起き。本作のようにボーイスカウトが台風で孤立化したケースは別。現場が作戦と名付け英雄的に対処するミッションチック。シミュレーションチックな印象が強い。一方。ウルトラセブンの世界観とは。怪奇大作戦と地続きでズバリ有事といおう。事件はほぼ何処でも起こり得て。団地とかの生活空間といえどもセキュリティはほぼ皆無で。安心出来ず影響は簡単に及んで来る。防衛軍は前線で忙しく庶民には手が回らない。だからsriのような民間で自警するしか無い。

2017年4月29日土曜日

科特隊出撃せよ

ネロンガのその特徴的な可動式の角から発っせられる光線だが攻撃用の武器ではない。バラゴンの光る角を思い出して欲しい。あれは地底活動の為のヘッドライトだった。そうネロンガの光線はそのバージョンアップされた物だ。主に地底を照らす為に本来は使われる。だからアラシが喰らっても大した事にはならなかったのだ。ただやはりバラゴンの口から発っせられる地下掘削光線的な成分も少なからずそこには含まれていて人ではなくガスタンクなどに当たった場合などは地底の鉱物に反応するように金属を溶かすのか爆発炎上していた。いずれにしても攻撃用の武器ではない。こうした設定がいかにも上手く作用し実在しそうな生物感が醸し出されバラゴン同様ネロンガ名怪獣たり得ている。また透明時に発っせられる光線の軌道もイイ。サカサ稲光とでも言おうか。実に神秘的な光景に見える。本作。ネロンガ出現のきっかけと対峙の主賓が基本的にホシノくんでウルトラマンは助っ人でしかない。そこのところが非常にウルトラq的でウルトラマン中心の単純なヒーロー物にまだ固まり切っていない。そこが魅力。

2017年4月26日水曜日

悪魔と天使の間に・・・・

帰ってきたウルトラマンの郷秀樹だけが変身アイテムを貰えなかった。そんなことはない。変身アイテムよりもっと嬉しいアイテムを貰えている。そうウルトラブレスレットだ。それは一種の変身アイテムと言えるだろう。肉体ではなく心の。ブレスレットはいわばスイッチに過ぎない。今の郷ならブレスレットの強大なポテンシャルを充分制御できるだろうとふんだからセブンは与えたのだ。第二の命を分けて貰った当初その超身体を扱いあぐねていた郷とは違うのだ。そういう意味ではやっとここで初めて変身アイテムが正式に貰えたといえそう。当時はブレスレットだなんてダサい。女の子みたいだ。などと思っていたが今考えるとなんのなんの実に奥深い重いアイテムだ。だからゼラン星人との戦いは心と心そのもののそれだったと言えるだろう。11月の傑作群は全て郷の心の長足の成長を刻印している。歴代のウルトラマンの中でも体力は一番弱いかも知れないが精神力はピカイチだ。帰ってきたウルトラマン。ブレスレットの奴隷とかブレスレットこそ本体とかブレスレットのエネルギー充填用クレードルに過ぎないとかサンザンだけど裏返せばだからこそその在り方が人間ウルトラマン。心のウルトラマン。魂のウルトラマンたることを強く印象づける。

2017年4月22日土曜日

死者がささやく

怪奇大作戦。前期中期後期とざっくり分ける。前期。特撮人体破壊描写の早すぎた和製スラッシャーホラーが特徴。アラジンのエビゾリからの水圧死は超変則的人体破壊だった。なにより空想特撮シリーズ第四作としてのアクロバット的技術力の凄さは驚愕。中期。王道模索期。王道が模索されるっていかに怪奇大作戦実験的革新的だったかと言う事。後期。子供置き去り大人の人間ドラマ連発。ウルトラマン3クール目の時のように先が見えていたのでウルトラマン3クール目の時を教訓にスタッフキャストその時以上にやりたい放題やったって感じ。そして本作。幕切れがチャイナタウンなロマンポランスキーマナーのハードボイルドミステリー。真犯人の女のフェイダナウェイばりの組織の女としての秘められたその過去が知りたい。男と女の男女の深い関係が湯気のように臭い立つ温泉地で始まり温泉地で終る後期の幕開け。

2017年4月20日木曜日

吸血地獄

先日マンホールの中の人魚を観たんだが、その話、結局、妻に先立たれた男の幻想で、死体損壊中に逮捕。本作も恋人の事故死以後全編幻想だと言う見方もあって、元々、青年は薬物中毒だったし、シナリオのラストでは恋人ニーナの養母に射殺されるはずで、確かにその方がバッドトリップの悪夢と言うか、幻想には相応しい気もする。タイトルも本来は、吸血地獄・編だったらしい。そういえばATGの青春映画に、初恋・地獄篇ってのがあって、ググると養父に引き取られ性的虐待を受けていたとか記載、もしかしたら本作のニーナも。だからそれを知ってずっと何も出来なかった養母がせめて自分の手に掛けて、と言う事だったのか。いずれにしても何処までも抜け出せない、地獄を巡るようなバッドトリップ、薬物中毒の恐ろしさを伝え切っている。言及すればする程、何処までも魅力を増す本作だが、人の世の悲しさが時代を経る毎に増す。超弩級の名作。

2017年4月19日水曜日

地上破壊工作

あの地下人類の、バレバレアイメイクだが、逆転の発想と言うか、コロンブスの卵と言うか、ニップレスとかマエバリに通じる本来見えてはならないモノ、の卑猥さが想定外で出てる、外人だからか。彼等にとっては眼は性器と言わんばかり、ともとれる。第四惑星のロボット長官の何処までも俗物な卑猥さに通ず。カラーシーンのメイクのそれは今見てもやっぱりあれ、だったが、ただ、モノクロの地下世界シーンでのメイクのそれに関しては、今見た方が更に恐ろしい。モノクロって事でか、またセピアって事でか、8ミリ時代、まだ輸入盤全盛だった頃のブルーフィルムや後のスナッフフィルムを連想させる、からか。更に、体育館の中央にポツンと設えられたハヤタの寝台、シュールだし、衆人環視めいて、辱しめられているようで、やはり何処か卑猥。後年の監督のSMな作風に通ず。何と言っても、地下四万メートルの地下都市が地上そっくり、なんて、のは、やはり、第四惑星程の完成度ではないが、今見ても充分魔界な雰囲気が伝わって来る。それにしても実相寺監督の描くマンやセブンって時に対ジャミラや第四惑星や本作のように、巨大ロボットな冷酷な破壊神な禍々しいオーラを発するんだけど、平和の巨人視な筆者からすると一寸複雑な気持ち。

2017年4月18日火曜日

人間標本5・6

峠の山道での、路線バス連続転落事件。件のバスに乗り込み、潜入捜査の隊長。乗客の中に犯人が的な、バスジャックかと思いきや。バーチャル事故に巻き込まれ、孤立させられる隊長と女。導かれるように、山頂の研究所へ。研究所は既に宇宙人に占拠されていた。隊長と女の閉鎖空間ダイハードな、脱出劇が繰り広げられる。立て籠り犯の宇宙人、殺しても死なないゾンビキャラで、焼け爛れた顔して何度も襲ってくる。早すぎたジェイソン。本作。犯人一味が侵略宇宙人にしては青臭い小物感。三面怪人設定が不良少年グループのハロウィーン仮装に見える。そんな体で、刃物振り回したりしたら、それはそれで恐ろしいけれど。司令官も何処から指令を出しているのか。標本にされてしまった人々はその後どうなってしまったのか。謎は深まるばかり。隊長が意味不明な窮地に陥る事から、やはり所長が意味不明な窮地に陥る、怪奇大作戦こうもり男を思い出した。

2017年4月17日月曜日

オイルsos

さてジャミラからのウルトラ水流つながりというわけではないのだが。本作。とにかく都会的でシャープな外国映画っぽいスケールの映像感覚がドラマ部分特撮部分ともに筆者個人的にたまらない。キャストも嬉しい宮川吸血地獄ヤカベ刑事洋一。そして梅津栄に平田昭彦と豪華だ。いきなり開巻世界中の石油コンビナートが謎の連続爆発炎上。テロか。一転ホラー。点滅しながら異動する海中の光跡。テロリストの潜水艦か。なんかマイティジャックな出だしでワクワクする。と思わせての油獣ぺスター。その吸血コウモリ顔と悪魔の手のような造形はやっぱりホラー。円谷の一ちゃんってばホラーずきなんだから。都市における石油は人体における血液と同じだ。本作は逆吸血地獄。怪獣スケールの吸血鬼ホラー。吸血地獄はホラーサイズの怪獣物。こんなスゴいアクロバットを平気でやってしまう。画面の奥行きと転換のスピード感。テレビと映画の楽しさの両方を兼ね備えている。もうたまらない。ジェットビートルがまたかっこいい。ただの垂直離着陸小型偵察機扱いではない。全員が乗り込むプロトMJ号な万能戦艦扱いなのがなんとも嬉しい。ドラム缶流失いや失礼。大量のドラム缶投下シーンはまるでベトナムでのナパーム爆撃のようで皮肉な恐怖感さえ漂う。ドラム缶同士が洋上を嵐の前の静けさで断続的にぶつかり漂う音と特撮の不気味さ。後半の人間くさい話といい円谷金城。このコンビのこころざしの大きさと盟友感。ホント大人になって染みてくる。そしてなんといってもこのコンビでのウルトラマンの位置付け。本作でも怪獣退治は防衛軍の仕事。英二パパにまかせます。俺たちのウルトラマンはメカニコングのような戦闘ロボット兵器ではない。どっちかっていえばアトム寄りだぜっていわんばかり。ウルトラマンは消火作業とそしてなによりイデの心のケアの為に変身し身を呈して奉仕する。この見事なムラマツハヤタの隊長副隊長コンビ。その隊員への思いやりのコンビネーションプレー。この姿こそ後にセブン最終回でしっかり刻印されるウルトラマンの友であり平和の巨人としての姿なのだ。円谷金城コンビはホントにスゴい。その場限りの子供向け特撮を大人人生一生の名作映画に匹敵する男泣き人間ドラマにまで昇華させるのだから。ラストカットで垂直上昇するジェットビートルの腹が炎と油で煤けて大汚れしている。科特隊。プロフェッショナルの。仕事の証しだ。たぶんまたMJ号ばりに全員で乗り込んで基地に帰還したんだろうなぁ。それを会話とかでなくクールに映像で見せ切るアダルトなハードボイルド感覚。でも。ジェットビートルでの科特隊。MJ号やホーク1号と違って江戸の庶民の長屋か昭和のお茶の間のようでぎゅうぎゅう詰めなのがまた御愛嬌。

2017年4月16日日曜日

故郷は地球

ジャミラ。悲劇の平和の巨人という点。フラバラのフランケンシュタインを思わせる。子供の時には彼を怪獣と馬鹿にして。セーターを被り真似をした。残酷な事をしたと後悔している。彼の顔は同じドイツ人ならフランケンシュタインの顔がパッと区別つくように同じフランス人ならパッと区別がつく程で。個人の人間の面影をしっかり残しているし。傴になって全身がひび割れてしまっているが。怪獣なんかではなく巨大化した人間体なのはセリフから自明なはず。なのに我々は。思い切り怪獣に寄せたフィルターでしか見れなくなってしまっていた。当時は。でも。今は。そして人間衛星。悲しい響きだ。彼が乗っていた円盤形のロケットから。ミステリーゾーンの幻の宇宙船を思い出してしまった。墜落した人間衛星が成仏できず。永遠に軌道上をさまよい続けるという物。国際平和会議。偽善だ。工場や学園や原発。誘致の裏利権で見せ掛けの発展を遂げた。地方のブラック企業城下町のウスッペラな雰囲気が漂う。犬神家っぽい陰鬱な村。避難民が抱く柱時計に業の深さと差別の連鎖を見てしまう。本作でのウルトラマンは登場シーンも短く。格闘も殆どしない。冷たいロボット兵器ソノモノに見える。格闘の舞台のミニチュアセットも良くできている。いかにも会議の為に急ピッチで開発された地方実験都市で。田園に不似合いな近代デザインの総合ビルがぽつぽつと。テーマパークのアトラクション施設のように。点在するだけなのが本当に寒々しい。その寒々しい人工開発地区を背後に。冷たい雨の中。造成中の泥にまみれ一人孤独に。のたうちまわるジャミラ。ムルチと帰ってきたウルトラマンの公害企業工場の敷地内での雨の格闘シーンも良いが。本作の格闘シーンの痛ましさは桁外れ。なにせ人工降雨ミサイルの洗礼を浴びせた上にウルトラマンのジェット水流。たぶんそのせいでジャミラの死体は川の濁流となって。きれいさっぱり海へと運ばれたのだろう。何事もなかったかのように。そして雨上がり虹かかる逆光の中。会議に向かうセレブの人々。皮肉にもジャミラも宇宙飛行士というセレブだった。木霊するイデの叫び。でもこれは社会派の告発の叫びではない。あくまでもジャミラの悲惨さの。会議の欺瞞さの。ウルトラマンの冷酷さの。開発地区の寒々しさの。そういった近未来のゴシック感アイテムをクトゥルーホラー作品として相対的に際立たせる為の道具でしかない。実相寺監督のその後の作風から氏が本作で何をめざしていたかがわかる。脚本の佐々木氏には悪いが。乱歩的なグロテスク趣味だ。プロレタリア文学的告発ではない。イデの過剰さはそのグロテスク趣味のなかの範疇だ。本作は円谷一のミイラの叫びと双璧のホラー回として楽しむべきだ。怪獣使いと少年も超兵器R1号も。あっ。今気がついたけどR1号ってR62号の発明から来てるのかも。そして前も書いたけどホラーの社会的効用なんてものは社会の病巣の治療そのものでも病としての戦争や公害の告知告発でもない。治療計画構築モラトリアム。あくまでモラトリアムとしてしか機能しない。だったらホラーは不用だ。という結論にはならない。困難に慌てるのではなく困難の前で一旦。グッとこらえ立ち止まる。しっかと見詰め。ではどうするか。その余裕。その勇気。その機会を与えてくれる。つまり不用ではなく無の効能。不用者はカッコ悪いが。無用者。ムヨウモノ。の言葉の響きは。なぜかどこかカッコいいのと同じ。無用の用というやつである。ジャミラ。あんたかっこいい無用者だぜ。

2017年4月15日土曜日

3年B組金八先生第2シリーズ卒業式前の暴力

平和な下町に荒谷二中という荒廃した学校があってそこでは教師が生徒を地下室のようなところで体罰し生徒同士もトイレなどで陰湿ないじめをしている。荒谷二中は全校生徒にしてもほとんどうつしだされず数十人。不気味だ。騒ぎが起きているというのにだ。風景も薄汚れている。まるでお化け屋敷のようだ。騒動ですべてが明るみにでる。警察での荒谷二中の校長の疲れていたという言葉。疲労老齢の疲れたとも何物かにとり憑かれていたともとれてすべての張本人まぁ巨悪。そういうふうに原因が徐々に明らかにされていくところなど定番娯楽ミステリー調ホラー調でとても好感が持てる。本作に社会派などというレッテルを貼ってはいけない。もはやsf学園ミステリーかというくらいに娯楽に徹しているからこそ本作は古びないのだ。管理教育デストピア惑星からの逃亡生徒。まぁ未来からでもよいが。孤独な地球生徒。奇妙な友情。地球生徒と逃亡生徒は連れ立ってデストピア惑星へ。どこかnhk少年ドラマシリーズの雰囲気も。あって。教育現場の荒廃ぶり。ヒロくんの孤独なイケメンヒーローがなぜあんなに社会現象にまでなって本人を苦しませたか。当時の荒廃ぶりが想像以上だったからだ。

2017年4月14日金曜日

続・猿の惑星

彼らは核ミサイルの御神体に祈りを捧げる。彼らにとって核は使う物ではなく有って然るべきな心の支え。だからこそなのか。心の平安が保て念力やテレパシーが使えるのは。我々は実に平和な存在なのだと言わんばかり。それってもしかして核を、抑止力および戦略のカードとしてのみ機能させ見せ掛けのパワーバランスに漂い原子力の平和利用なら全て善しとばかり、とことん未来まで推し進めた結果の男根崇拝チックな戯画ではないのか。念力やテレパシーは核制御技術の副産物としてのITパワーの喩えではないのか。さらにあろうことか、普通に喋れるのに、それを快楽の為に、過剰にドラッグのように常用しているようにしか見えない。これでは、まるで反戦をお祭りネタとしてしか使わなかった対立側のヒッピーと同じではないか。そして最後の呆気ない幕切れは、たった一人の一寸した偶然でスイッチは簡単に押されてしまうのだという現実を象徴しているのではないだろうか。猿の惑星五部作の中でも最も破綻したトンデモ番外編な本作が今でも有効だという事実には何か生々しく気色悪い思いを筆者は拭い切れないでいる。純粋に正邪飲み込んでの正常な諸行無常のループ五部作としての本来の猿の惑星が早く楽しめるように世界がなって欲しい。チャールトンヘストンがトランプに見えて仕方ない。自分は今、本作に躓いている。舞台が舞台だからだ。問題は全て禁制地帯に捨て去れば良いという猿の考え方。全てはセブンK地区な、そんな汚染されたスラム以下の場所で起こっている。だから太陽を作った男のジュリーみたいな奴らがカルト集団を作って潜伏しててもおかしくないし好戦的なゴリラは戦争ゲームを楽しみに来るだろうし何が起こっても不思議のない無法地帯。当時のアフリカのような所。しかし、こんなトンデモ作に今だ試されるような現実世界。重ねて言う。これで良いのか。

2017年4月11日火曜日

侵略する死者たち

とにかく防衛軍基地の広大なエリアの中に存在すると思われる第三病院が不気味で仕方ない。ここは地球防衛軍基地。今は星間戦争戦時中。宇宙人からの生物化学兵器による攻撃も無くは無いだろうから、その未知の病原に向けての実験用死体を常に豊富に軍は確保必要とし てるはず。第三病院とは名ばかりで、実態は、基地外部から窓口としてヤバい手を尽くしてすら死体をかき集めている、地球防衛軍の、いちセクションに違いない。もう第三病院のある、あの街全体がホルマリンくさいはず。そんな企業城下町というか、理化学学園都市が、しれっと敷地内に存在する防衛軍も防衛軍で不気味この上ない。とにかく本作は宇宙人によるバイオテロが絶対にあり得る、あり得た、そんなことを、明示せず、暗示していたり、におわせていたりする、そんな内容だからこそ、よけいに怖いのだ。スポンサーが薬品メーカーだったから直接なバイオテロ。薬害とか伝染病は描けなかったのかも。地下道をゾンビのように徘徊するシャドウマン本体の 一人を撃ち殺す場面。あれが感染症患者だと考えると怖い怖い。想像してみて欲しい。狙われた街で小規模な精神バイオテロは描かれていたが本格的な伝染性バイオテロが防衛軍基地で起きる、起きた、その地獄絵図。きっと、そんな経験すら乗り越えての、あのポジティブさなのだ。ダンやウルトラ警備隊の面々は。ただただ凄いの一語に尽きる。まだある。盗まれた、世界の防衛軍基地の所在を搭載した極秘 データだが。転送先を辿る際に出てくる東京K地区。なんとなんと、そこには、草ぼうぼうの中に建つ廃墟ビル。このK地区。まるで震災か爆撃を受けた跡地にしか見えない。設定の近未来戦時中を踏まえると、先程、広大な防衛軍基地と書いたが、最早、日本中が基地化し、残る場所は尽く廃墟化してしまっているのではないのか、そんなふうにさえ考えてしまう。いや逆か。尽く荒廃した本土だからこそ、基地にするしかなかったのかも。特に本作は。まるで死霊のえじきか惑星ソラリスかと言わんばかりの閉鎖空間感終末感絶望感なのだ。冒頭の潜水艦では謎の爆発が世界中で観測されているとか言ってるし。何れにしても、なんと荒涼とした星間戦争時代なんだろう。トンデモ批評を自覚ついでに、更に続けさせてもらう。先のセブンがガラスコップに閉じこめられた時の物置と言うか、 倉庫と言うか、そのセット。テーブルの上に無造作に乗せられた椅子だったり埃を被った薬瓶だったりと、やけに生活感していたが、学校の怪談みたいで、これまた怖い。撮影所の片隅を、そのまま流用したりしたのだったら、それはそれで、その、虚実、日常非日常の、メタフィクションさが、更に更に、目眩がするくらい怖い。メタフィクションついでに、トンデモ批評をさらに畳み掛けさせていただくと、冒頭のメディカルセンター室内での都市伝説幽霊。もしかしたら、当時の子供たちの間で、そうさせようと、スタッフが意図的に仕掛けたとも。

2017年4月10日月曜日

妖怪・どろ人間

予想を裏切り中々切ない話だった。タイトルからもっと、妖・怪・泥・人・間だし狂暴な奴かと思ったらルックスも愛らしく出自も憎めず、ちゃっかりと我が愛するダークヒーローの一人に新たに加わってしまったではないか、その背中に木漏れ日の美しい影さえ背負い。その哀愁、よっ唐獅子牡丹。本作、柳谷寛のお巡りさんが全てを象徴していた。悪者達もただの与太者の集団かと思ったら、何か格闘術にも長けていて不気味な組織が背後にあるようで益々憎らしく、殺された泥サンゲリア男に加担したくなる。結局このお巡りさんがしっかり全員逮捕。このお巡りさん多分年取ってて居眠りなんかもするけど元々有能なので、きっと組織も摘発し潰滅してくれるだろう。そしてやはり電波銃が気にかかる。実に格好良い。銃身からアンテナさえ伸びていたりする。本作では泥人間の生前の頭のチタンに電波が反応。期せずして泥人間の正体を浮き彫りにする。もしかしたら銃から放たれた電波の影響は大きく、チタンに残る残存意識さえ目覚めさせ、無益な攻撃を止め自分を殺した男だけを追い詰めるような振る舞いにでたのかも。つまりここにきて泥人間、バクテリアの塊から真のゾンビになれた。そんな怪我の巧妙と言うよりモンスター物定番の、そんな人情味さえ溢れる、もはや男泣きレベルの銃の使われ方。実にハードボイルドで気が利いている。いやはや本作れっきとしたゾンビ物。それもかなりの逸品。

2017年4月9日日曜日

獣人雪男

なんとも不思議な味わいの本作。思いのほかテンポも良く、メリハリもあり、古さを全然、感じない。充分、ゴジラ第一作に肉薄する出来。少なくともゴジラの逆襲よりは良いと思うし、個人的今一作品、モスラ対ゴジラにも、本作のようなテイストを自分、望んでいたのだと噛み締める。全編、駅の待合室での回想と言う設定が、これまたクトゥルー物っぽく、暗黒宇宙的スケールを感じさせる。序盤は正統派雪山ミステリー。中盤は三つ巴の山岳アクション。そして終盤が特に味わい深い。たしかにロストワールドな秘境探検物ではあるけれど、ここでの雪男。一族の最後の生き残りとして、骨の散らばる洞窟の奥に、孤独に暮らし、その姿には、ゴシックムードさえ漂い、崇高なカタコンベの墓守にさえ見える。同時に、異星や人類滅亡後の地球にサバイバルした、伝説のダークヒーローにも思え、雪男の身の上に何故か深く同化してしまう。街や研究所などの近代的アイテムが一切、描かれていない。唯一、珍獣ブローカーのトラックだけ出て来るので、まるで自動車が宇宙船のように見える。だから善玉であるはずの主人公一派も含め、我々、都会人側の方が悪の侵略者のよう。怪獣物と言うより東宝特撮には珍しい、早すぎたエイリアンな、SFホラー物で、変身人間シリーズから、ちょっと浮いている、あのマタンゴに通じる作風。よって村人の異形を障害者的差別表現とし、ソフト化を自粛するのは全くの的外れ。あれは近親混血の結果での奇形ではない。バンパイアのように、各人、猿やら狼やら熊やらとの混血の結果で、立派なミュータントでありハイブリッド人間。村人全員それぞれが魅力的なモンスター達の、ティムバートンマナーなアダムスファミリー状態なだけ。確かに医療不足から怪我などの後遺症での不具者は何人か居ただろう。治療その物は出来ない。しかし施療者に判断基準を与え正確な治療指針構築の手助け位にはなる。ホラーの効用なんてそんなもの。以上でも以下でもない。

2017年4月8日土曜日

世界大戦争

朝鮮半島での停戦も束の間。北極海上、戦闘機どうしの小型空対空ミサイルが、交戦中に非核設定から核設定に切り替わる時の特撮表現が実に禍々しく不吉。

2017年4月6日木曜日

白い顔

傑作和製ホラードラマとしての怪奇大作戦を語る時に忘れてはならない事の一つとして、既なる海外産スラッシャームービー射程の人体破壊描写の試みがある。緻密な円谷の特撮だからこそ成し得た冒険的だが確信犯的な試みだ。本作では白昼のオフィス街での阿鼻叫喚の人体発火なる極めて今日的で、テロさえ彷彿とさせる人体破壊が正しく衝撃的だった。白い顔の乱歩趣味はテレビの前の当時の子供達へのサービスだと割り切れるとして、後半の湖畔の洋館での正統派ゴシックホラー調は見事な物で、現代的なスラッシャー調との接続は奇跡的だ。待てよ。ここに白い顔がクッションの役割をしているのかも。だとすると実に巧妙。CG時代で今ならもっと凄まじいシーンも手軽だろうが自粛風潮と放送コードから実作は望んでも無理。緩い時代だった当時とは言え、万能の特撮技術が冴えていたとは言え、躊躇なく人体を溶かしたり砕いたり燃やしたり切り刻んだり。やはりベトナム戦争や赤軍派テロに対するスタッフの祈りとか思いのような物を感じずにはおれない。ヒッピーじみた反戦運動とはまたちょっと違う怪奇大作戦前期の持つそのメッセージは今も熱い。後期は後期で環境問題への深い問い掛けと人間の業への言及。

2017年4月5日水曜日

吸血地獄

怪奇大作戦。毎回二時間ドラマを三十分にはしょったような体裁のせいでどこか懐かしのお昼のワイドショーの再現ドラマな下世話さと淫靡な雰囲気を知らず知らずのうちにまとってしまっている。特集の夏限定の怪談シリーズあなたの知らない世界などはもろ怪奇大作戦。だから吸血地獄最強エピソード説を筆者は唱えてしまうのだ。考えてみてほしい。外交官子女が不良大学生と謎の逃避行。少女に何が起こった。これをワイドショーワンコーナーうってつけ昼下がりの奥様好み女性週刊誌ネタ検証VTRと言わずしてなんとする。まさに吸血地獄はタイトルも含めその未解決な不可解さと過剰なまでのナレーション処理それに子供が真似さえしたくなって教育上よろしくない暴力的なまでの吸血鬼のあの造型でザ再現フィルムと言いたいそのスキャンダラスな味わいは怪奇大作戦中随一。後期の岸田森プロモビデオ化での三十分枠の乗り切り方とはまた違った魅力の乗り切り方を前期は持っていてその模索が時として奇跡的三十分を生んだ。

2017年4月2日日曜日

霧の童話

本作は霧つまりガスの中に幻覚成分が混入され霧そのものもスクリーンとなってよそ者をバーチャルに包み込み幻惑するというもの。ただの幻惑ならよいがどうやら開発の被害者であり真犯人でもある村人。犯行の動機には絶望が色濃く破滅への必然は免れようもなく結末で事件の村は全滅するが何か村そのものが例のガスに元々芯まで汚染されてしまっていて村人も大半がガスを麻薬的に常用。もともと村へ逃げ延びた敗残の落武者をなぶり殺しにしたような因襲深い村だ。代々罪の意識に苦しんでいたって不思議はない。そしてついに村人自身が自らダムの栓的なものを開けてしまったかのように見える。限界集落の絶望カルトな自爆テロ紛いの暴走。またその上に上にと罪深い開発が塗り重ねられていく。いつまた深層の罪の意識が噴出し自滅するかわからない。少年も含め村全体が素朴とかではなく現実味なくどこか浮わついている。ただ野辺の地蔵とコスプレのボケ老人だけが皮肉に村を見おろしている。