2019年7月31日水曜日

怪獣少年の復讐

廃線というほどではないが。さびれた郊外鉄道沿線の雰囲気がまずよい。高台の鉄道会社社長宅と線路高架下のまずしい界隈。その対比。鉄道会社社長が名前だけで。非常に重要な役まわりなのだがその描写。一切皆無。かなり不気味。その鉄道会社社長宅でおこるミステリーではじまり。郷と少年の感動物語でおわる。のだが。希少車両。ふるい変電施設。などの鉄道風景もあじわいぶかく鉄道マニアにアピールする鉄道映画としてもっと評価されてよい。岡隊員の前線での男前さ。など。全体に男くさく。硬質かつ濃密で過剰。泥くさいリアリズムは。帰マンどころかウルトラシリーズ全体とおしてでもめずらしい作風。鉄道事故前後にきまって停電がおこるという捜査線上のミステリー要素や。線路上に石をおいて列車事故を誘発させる容疑者それが鉄道マンの父を事故でなくした。くらい目のビッコの少年。これら数々のサスペンス要素が複雑にからみあいまるでヘビーでアダルトな刑事物のようである。また同時にアメリカンクラッカーや怪獣人形など小物も充実で細部にもぬかりがない。観賞しなおし相当な名作ときづく。

2019年7月26日金曜日

吸血地獄

暗黒物語である。戦後のドサクサ。ヒロポン患者やパンパンがあふれかえっていた時代。それは洋の東西をとわずであった。外交官がポーランドの売春街であそんだ折。売春婦からたくされた赤子。それがニーナ。素行不良の血はあらそえずニーナはブルジョワ世界からとびだしヤク中の青年としりあう。話はもどる。あふれかえっていた売春婦の時代のことである。そのなかに吸血鬼そのものの症状がでる奇病におかされていた者がいたって不思議ではない。帰国引退後も外交官はその母親とかわしたプレイがわすれられずその娘ニーナともそんなプレイをかさねていった。外交官の妻ももはや制止できるレベルではなかった。そしてついに外交官は全身の血さえうしなって命をおとしてしまう。庭の木陰でひそかにたのしんでいたのであろうか。死体は庭師によって発見。デカダンのきわみ。自業自得といってしまえばそれまでだ。このように本作の背後にはそんな最暗黒のすくいようのない世界がどこまでもふかくひろがっている。

2019年7月25日木曜日

宇宙指令M774

本作。主要テーマは地球には全歴史にわたってじつはもうすでにあらゆる宇宙人がひそかに定住して暗躍。というものなのだがそれにはボスタングのような生物兵器や超兵器もふくまれていて。ひそかに移送され設置されまだつかわれてなかったりつかわれないで遺棄され遺跡化したり冬眠したりしている。そんな事情もえがかれている。不時着した変なジュークボックスのあったあの場所もじつは宇宙人の基地か超兵器の。痕跡めいたものとおもえばよい。また同時に対侵略組織もじつは全歴史にわたって存在。こうしたこともやはり本作にはえがかれている。唐突に登場する海上保安庁の戦艦。何処からか飛来してくるジェット戦闘機。異様なかんじさえしてしまう。じつはこれ海上保安庁とか自衛隊とかなんかではない。これらこそ地球防衛軍のガイネン。ソノモノ。イメージ。ザントウ。ザンゾウなのであるのだ。だからリアルな装備なのになんとも現実感のないシミュレーションじみたあっさりバトルにみえてしまうし乗組員も亡霊っぽくみえてしまっているのだ。しかしそれは現実をはるかにこえたとんでもない破壊力であり軍事力であるのだ。この地球防衛軍と現実の自衛隊とのセンビキミキワメモンダイ。東宝円谷特撮作品をみる場合。全作品にわたって。非常にデリケートによこたわるモンダイで。視聴者の高度な脳内補正能力をようする。

2019年7月16日火曜日

パーフェクトカップル

送り主にたどりついたとおもったらそこは墓地で。すでに死者の送り主と勝手に強引にパーフェクトカップルにされてしまう主人公女史。まわりのすべてがグルのようだし。送り主のサダハルがまったく描写されない。まるでラスボスのよう。で。不気味きわまりない。モノリスのようにそそりたつその墓石ばかりが。えげつない存在感でせまってくるばかり。漆黒の虚無へと支配されゆくごときこわさ。なにか宗教戦争やナチズムといったようなものをさえすらかんじさせられる。かってに英霊にまつりあげられたサダハル。ころされたか。いや。はなっからそんな彼はいなかったのでは。いや。いたとしても死人にクチナシ。だろうし。さて魔女めいた。母親をなのる者や。寺社。秘密結社構成員めいた。住職や社員たち。いつのまにか利用されるだけ利用されてしまっているコワサ。ポーの黒猫やローズマリーの赤ちゃんと同系の。そうそう。黒猫といえば。あれは魔女がりの首謀者が魔界から復讐されるような都会の都市伝説。のようにもみえる。それは余談だが。本作。都会にぽっかりあいたヒューマンブラックホール。そのソラオソロシサ。といったら。格別。よくある田舎にいって閉鎖的な因習にハマり猟奇的事件にまきこまれるというのとはまたべつの恐怖。日常のすぐそこにあるファシズムの不条理のような実存的恐怖体験。

2019年7月13日土曜日

京都爆弾観光ツアー

ミラーマンは鏡を契機に鏡の世界へといききするのだ。そこで本作。本作の主人公そうまた奇妙な被害者が主人公。とにかく音の世界に没頭している。さて音を図像化したサウンドスペクトルグラフというものがあってそれが今回の鍵。逆にサウンドスペクトルグラフという図像から空間をわりだすのだ。さすが科捜研。そうしてわりだされた殺害現場。奇妙な主人公その終焉の場。その竹林がまた幽玄そのもの。この世とはおもえない。そうまるで本作の主人公はミラーマンならぬサウンドマン。恋人は永遠の音の世界にたびだってしまった。そんなせつないsf作品。だった。ぜんぜんサブタイトルとちがう。

2019年7月1日月曜日

吸血鬼の絶叫

警察がさっぱりでてこない。だからこそよい。街がなにやらパラレルワールドか近未来の無法地帯にみえる。おまけに街の人がほとんどでてこない。核戦争後のような人口密度だ。ビル街とかうつしだされるんだけれど。それがまたさむざむしい。ナイスだ。さらに主人公。意味なく科学者的好奇心旺盛で。単独捜査ばかりしている。じつの妹がしんだというのにだ。捜査の動機もその復讐心とかでもなさそう。うれない科学者の屈折したなにかの性癖のほうがつよいようにみえる。うれない科学者くずれと浮浪者のようなドラキュラくずれが。場末のバーのママをとりあうすくいようのないズタボロ三角関係のラブロマンスとしてみるとホントやるせなくてとてもすきなテイストだ。おおむね批評はさんざんな本作である。でもでも筆者は大すきである。べたなラスボス吸血鬼。なにかくるった道化師のコスプレかなにかのようにみえて。それはそれでこわい。なにやらえらくかたいれして過大評価しているようにみえるかもしれないがそれをさせるなにかがしっかりある。なぜならちゃんと用意されているオチというかバレネタがこんな筆者にはよけいにおもえるほどなのだから。