2019年3月31日日曜日

ある殺し屋

これはもうほとんど黄金の七人のようなある犯罪グループのそのミッション達成へいたるまでのスリリングな恋と友情とうらぎりの青春内幕群像劇だ。キャストをあげる。市川雷蔵。野川由美子。成田三樹夫。小池朝雄。渚まゆみ。小林幸子。この顔ぶれでおもしろくならないわけがない。なによりも主人公雷蔵の異星からのスーパーマンのようなたたずまい。まるで地球に落ちて来た男のボウイのようである。ストーリーも同様に群像劇だ。地球に落ちて来た男のほうは企業たちあげから大プロジェクトへをえがいているのでほとんど人間関係も結婚離婚絶交再会と大河ドラマしているが本作のほうは一件の暗殺ミッションとその臨時召集メンバーだけなので規模の大小がある。だが。しかし。その味わいは同質。そして。やはり格別だ。地球に落ちて来た男ほどしぶくはないのでターミネーター第一作のようにならじゅうぶんいまどきの特撮若者へもアピールするはず。十代でも二十代でもないちょっと哀愁のすきまかぜふきこむ青春晩年組が犯罪によってあのあつい青春をとりもどそうともがくときの群像劇はたまらないあじわいがあるものである。たとえばオーシャンと十一人の仲間。こういうあじわいこそ青春映画ともアクション映画ともいわずフィルムノワールというのであろう。

2019年3月20日水曜日

蛇娘と白髪魔

養護施設の女子にめでたく親がみつかり屋敷にひきとられる。しかしその屋敷には。そう。よくある定番設定の怪奇物なのだが屋敷が近所でマチナカなのでゴシックなホラー感がもりあがらない。やはり屋敷はとおく山中の閉鎖的な村に。で。なくては。なのである。クライマックス。幽閉された屋敷屋根裏部屋から脱出。からがら養護施設にたどりつくのだが。施設長のシスターがナニモノかにころされ絶体絶命。でもやはりどこかもりあがらない。なにかあると施設と屋敷をいったりきたりなのである。で。おもったのだ。これは少女版家政婦はみた。そして少女版少年探偵団。では。と。してみてはどうだろうか。と。ホラーというよりミステリー。そして田舎ゴシックではなく乱歩で清張な都会派ミステリー。と。そうとらえるのだ。そうするとじつにハマリがよくなる。ライバル役の。主人公の姉の。なにやら不良少女更生物のようにさえみれてしまうのだ。あの大映ドラマがよみがえる。東宝ならこうはならない。ホラーへとふりきれてしまう。積木くずしなどがよい例で映画版の東宝版なんか。もはやエクソシストへとふりきれてしまっている。しかしこの大映テイストの中途半端さ。そこがじつにあいらしい。少女漫画の映画化としてはこれはこれでよかったのでは。でもやはり近所なのでもりあがらない感が気にかかる。施設と屋敷をいったりきたり。とにかくビデオ初見時には事実そうみえたのだ。だが。しかしである。こんな風にもおもえてきたのである。屋敷そのものが怪物的なイキモノとして主人公の心象で増殖したりして幻想もまじえられてえがかれているのではないか。とも。あの怪奇大作戦吸血地獄散歩する首もそうだ。ホテルも屋敷も山小屋も異常にひろい。無際限の宇宙のようだ。本作も。これ破綻ともみえるがそのじつとんでもないおそろしさをひめていたのだ。ビデオ初見時。二階の屋根裏部屋だというのにあの脱出シーンはまるで何十階だてだかの塔の上からの脱出のようにみえた。屋敷敷地内。はるか眼下に高速道路がよこぎりその下を鉄道線路さえ建物スレスレにはしっていた。あれはどうかんがえてもおかしい。幼少リアルタイム劇場初見時にはその他の恐怖場面ではなくこの迷宮感に。その夜ねむれなくなった。のである。ラスト。おわれにげこむ建築現場にしても実はそこもまだ屋敷敷地内であり工事建物も屋敷の一部だったのでは。そうすると。とにかく本作の一番おそろしいところ。それはその空間のゆがみ感をともないまくったバケモノのような屋敷ソノモノだったのでは。この湯浅監督というのは油断できないのである。事実昭和ガメラシリーズもその空間把握感覚はそういえばすべて異常だった。しかしその異常空間感は本作。コントラストのきついモノクロ画面をえてさらにひきたっている。そこでやはりモノクロ作品昭和ガメラ第一作をみかえしてみたのだが。やはり怪作だった。そうわすれられがちだが。ヒッチコックの鳥やめまいもそうでホラー映画醍醐味には空間恐怖というのがしっかりある。だから劇場でみるにかぎるのだ。

2019年3月9日土曜日

カメラを止めるな!

やはりパゾリーニ高校生映研あがりのゾンビ映画初老ファンとしては三層構造の一番外側がやはり一番おいしい。ホント低予算b級ゾンビ映画としてのソノ痙攣的なリズム感覚な編集がホントここちよい。伏線となるようにと丁寧につくりこまれたうえでのギクシャクさだからというのもあるだろうが。やはりデビュー作でありスタッフキャスト皆のフレッシュさもおおきいとかんじた。あの往年の時代のパンクロックのファーストシングルににた手ざわり。あの時代もプロデューサーバンドともにあつかったものだ。ぜひ一発屋でおわらないでほしいものである。とにかくピアやシティロードあの時代のあついインディーズフィルムなかんじはひさしぶりで。かえってきてくれた感万歳である。

2019年3月5日火曜日

行列

いわゆる異世界物で最後にどんでんがえしのあるいわゆるスジそしてオチだけをたのしむお子様なナンセンス物を期待してはならない。これはハードボイルドな都会の哀愁をえがいたつかれた大人のためのダークな寓話フィルムノワールである。あくまでもその黒い情緒をたのしむべきである。行列のはるか最後尾までつれていってやるとあらわれるオンナガタなタクシー運転手。ニューハーフメフィストなかんじが非常によろしい。いわゆるファムファタールな位置づけなのだ。だから主人公はじょじょに運命をくるわされてゆく。ながいながいトンネルのなかではセクシャルな空気さえただよう。そしてたどりついた行列の最後尾。なにやらとおく町はずれまできてしまった感場末感がいちじるしい。ここんとこがまた非常によろしい。都会の哀愁きわまるである。最後はロッカーゆえのシャウトがさえわたる魂のさけびでおわるのだ。タモリの不気味な上司役もクール。

2019年3月3日日曜日

GAMBA ガンバと仲間たち

やはり七人の侍の設定はワクワクさせられる。まず仲間が七人そろっていく課程。そして現場への移動。寒村や絶海の孤島で。環境が過酷であればあるほどモエる。敵のラスボスはある意味モンスターであればあるほど怪獣退治物っぽくもなりイイ。本作のノロイもその点イイ。集団催眠特殊能力のシーンはじつにもりあがる。それにたいして命をかけて催眠をとくムラのオサ。ここは非常にポリティカルであると同時に政治とはマツリゴトであるという視点があらわれており政治意識とは非常にあやうくもろいものという民俗学的文化人類学的相対思想であることがよくわかる。いってしまえば大衆文化サブカルチャー民主主義をかんがえなおすよい材料となるともいえる。子供むけだからこそ必要な視点ともいえる。ただゲーム的に蛮勇こそカッコイイとするのではなくホントの敵はなんなのか。ホントの敵はココロにこそひそむというオカルトでホラーな描写や視点。すぐれたヒーロー物とはやはりつねにすぐれたホラー物でなくてはとおもう今日この頃。で結論。本作ヒーロー物としては凡作だがホラーとしてはかなりイイ。そしてアニメっぽくないヘンな特撮とかんがえソコがイイとする筆者なのだった。