2022年6月15日水曜日

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア

学会で登壇もするような名外科医の父親。ゆがんだ父性を反映していびつな一家だ。そんな父親がショッピングモールからひろってきたホモ相手はダミアンっぽい下世話な少年だった。長女の同級生を騙ったり医者志望と嘯いたり父親はすっかりペースにのまれ職場や郊外の屋敷にまでいりびたられる。医者と患者やその家族が一線をこえたりちかづきすぎるとろくなことはない。患者遺族が悪魔教団だったりナチ残党だったりろくなことはない。もろアイズワイドしてるが診療科目がかわるだけでここまで生理的にかつ気もちわるくなるとは。つまり精神科ではありえない余命宣告。みはなされ退院はての劣悪な自宅療養。いつもはする側がされる側にされてしまうということだ。いかに人徳な名医とされている存在でも自分では気づかず残酷な権威となって君臨横暴していたかをおもいしらされるのだ。徹底的に自身の技術と人脈を過信しその最新医学力だけで応戦しようとする父親。技術と鉄のハートが仇となりそうではらはらする。そして一番おそろしいのはその最新最高権威の医学でもはがたたない人智をこえた相手だということ。まさに伝染病蔓延による人類滅亡その最終局面最高権威王家の最期をえがく地獄絵図。王家の一人を神の生け贄にささげなければその災厄はとまらない。王とは父親とはセレブとはそれをも自分できめなくてはならない。この期におよんでも一族の存亡からはなれられない。因果まさにギリシャ悲劇。まさにセレブ地獄。いがみあう隣家同士がばったり顔をあわせるファミレスな郊外の魔がえがかれている。家族と少年だけで人影もとだえた郊外のファミレスまさに静の終末風景。街ではゾンビがあばれて動の終末。

2022年6月14日火曜日

サイコ2

 中盤。人間というより建物が主役。20年の薄汚れた劣化が効果を深めている。それらがしっかりと再利用されレベッカなどのようなゴシックロマンス映画として立派に成立している。こんなロマンチックな感じは前作には微塵もなく面喰らうくらい新鮮。それどころかモーテルと母屋が繋がっているような錯覚さえあって空間がねじれたsfのようでもある。いやもしかしたら母屋の覗き穴はディスプレイになっててモーテルの監視カメラ映像がそこから見えていたりするのか。これなんぞスパイ映画っぽくもあり更に新鮮。これに先立つ今作前半ノーマンの出所受刑者のようなズタボロ感だが。男臭く土埃立ちそうなアメリカンロードムービーしててそこがしっかり前作の前半とシンクロし同じくハードにフィルムノワールしてて良かった。問題は後半だ。前作はノーマン単独のシンプルなサイキックホラーだったが今作はエイリアン2の如く今度は戦争だと言わんばかりの誰もがサイコパスってか状態で超能力者バトルロイヤルならぬサイコパスたちによるサイキックバトルロイヤルのカオスと化している。精神科医なんかキャリーばりの念動力で念入りに何度もころされるし。ラストでは中盤ロマンスした相手の死の復讐も果たし全てに勝利するノーマン。モーテルの看板に灯を入れ。母の為の母屋の暖房にも石炭をくべ。実母の影を映す窓の母屋を背にモーテルへと向かうシルエット。そうもはや純愛一直線生涯素人童貞貫くフランケンシュタイン系不死身ゴシックモンスター。治療者や模倣犯なんか寄せ付けもしない近代的価値観がナンボのもんじゃいな筋金入り完全無欠サイコパスマシーンノーマンベイツってば素直に無茶苦茶カッコ良い。完全にマーベルコミックのダークヒーロー。聖なる邪神の剣の特注キッチンナイフを手にディズニーホーンテッドマンション仕様の空飛ぶモーテルそのコックピットに乗り込んでアベンジャーズ入りだ。料理の腕もあげサンドイッチも前作より美味しそう。

2022年6月10日金曜日

昆虫大戦争

 これはsfではない。本作を観ればコロナで荒れた世界だから戦争が起きた訳じゃなかったとわかる。冷戦体制の復活マイクロ核の氾濫モラル低下など。それらが原因して。何かを予感したのか。辺境のウイルス。本作では昆虫。が本能的に反応して人間界に溢れだした。にすぎない。ある種の免疫反応。まるで神々の深き欲望のような大地信仰の原始宗教宗教映画。

2022年6月3日金曜日

六月の蛇

 これは塚本版の生きる。雪が雨に置き換わっているが。変態でもカメラを突き詰めれば人助けが出来る事を教える。お互い引きこもりで潔癖症の仮面夫婦がいかにもな金持ちで。生きるの役人のような。官僚主義に染まりまくった卑屈人種。こんな人種がディストピアを形成する。余談だがイヤホンがローターのようないやらしいツールだと気付かされた。ワイヤレス化でさらにいやらしく。