2017年3月24日金曜日

侵略する死者たち

黒沢清の回路に於ける幽霊の出自が面白い。幽霊の作り方ってのがあってドアの縁に赤いテープを貼り付けて、その部屋を開かずの間として一定期間放置する。そうする事によって、その部屋の中に幽霊を生じさせるというのだ。でも、ここから先が真骨頂。その幽霊を痛快なポストモダン仕様にバージョンアップさせさえしちゃったりする。その、やり方は、こうだ。幽霊のいる開かずの間にネット回線を引き込む。そして、その開かずの間を開かずの間のまま建物ごと解体して何も無い平地にしてしまっちゃうのだ。すると幽霊は居場所が無くなってネット回線の中へと避難。かくして嘗ては古典的な地縛霊だった幽霊はマトリックスの如くバーチャルの世界でポストモダンな最新型電子霊にバージョンアップ。見事な転生を遂げるというのだ。さて、ここで本作。シャドーマンの作り方でござい。回路での幽霊に相当するのが本作では病院の地下の死体槽に漂う身元不明の実験用の死体。それをネット回線を引いた部屋に相当する地球防衛軍基地に移送。なぜ地球防衛軍基地かって。それは、ですね。地球防衛の為に世界中いや宇宙中にセンサーを向け、あらゆる情報がテレタイプネットワーク化され、いうなれば究極の電子の要塞それこそが地球防衛軍基地だからなのです。そんな電子、電磁波、電波、渦巻く中に置かれた日にゃ動く死体だってゾンビなんかに留まっていやしませんって。神出鬼没のポストモダンゾンビ、シャドーマンへと大変身。そりゃ、しますよ。だんな。機密情報と一体化して宇宙空間に向けられたアンテナから衛星軌道上の廃宇宙ステーションの回路に侵入。廃宇宙ステーションに憑依のっとっちゃって自由に変形操作でミサイルやら超兵器やら自動生成。地球攻撃準備万端。そう、それが天下無敵のシャドーマン。いやはや凄い。だから本作を筆者は偏愛するのです。今風にリメイクなんかした日にゃバイオハザードなんか目じゃないっす。

2017年3月18日土曜日

散歩する首

怪奇大作戦中盤の中弛みとされている本作9、そして10、11、17、18、19。何か益々輝きを増してきているのでは。死体蘇生云々や首そして植物毒。科学犯罪ミステリーイディオムが満載。そればかりではない見直すと実に味わい深い田舎ホラーだった。互いに殺意ある男女の意味深な深夜のドライブと山中でのヒッチハイカーそして転落事故。典型的で実に良い。死体が運び込まれる山小屋の雰囲気も、また良し。ネズミを捻り潰す老婆。意味も無く山小屋の二階で死体を肴に酒盛りする村人達。もう典型的な田舎ホラーの道具立てで嬉しくなってしまう。クライマックスは例の男女で。女の死体を前にわざとらしい芝居を打つ男。と突然、起き上がる女。男が殺したと言わんばかりに男を指差す女。この恐怖。男は、いかばかりか。この男女の心理サスペンスの押し引き。短いシーンだが見事にホラーしまくっている。また、いつも秀逸なエンドソングシーン。今回は実に、お洒落なミニストーリー仕立て。

2017年3月17日金曜日

京都買います

リングは、呪われた破滅のプログラムがビデオテープへと貞子の念によって書き込まれ、再生されると、その恐るべきプログラムが発動してしまうというもの。そして、その動機も貞子の想像を絶する苛酷な身の上からの、追い詰められた末の、止むに止まれぬ切羽詰まっての、もの。そう考えると、本作と霧の童話も同様な、ような気が。霧の童話は、霧つまりガスの中に幻覚成分が混入され霧そのものがスクリーンとなって被験者をバーチャルに包み込み幻惑するというもの。ただの幻惑ならよいが、どうやらリングと同じく犯人側の動機には絶望が色濃く、破滅への必然は免れようもなく、結末で事件の村は全滅するが、何か村そのものが例のガスに元々芯まで汚染されてしまっていて、村人自身が自らダムの栓的なものを開けてしまったかのよう。そして本作。最初こそ窃盗的に仏像だけが電送されるが終いには美弥子の絶望の深さが装置に乗り移ったのか、装置が暴走してしまい電送先も訳の分からない別次元とかになって人間すら無差別に電送してしまうような事態に陥り京都全体いや世界そのものが荒廃の極に至って、その中を人類最後の一人だとでもいうように牧がさすらってしまっている。ケミカルを遥かに超える究極のドラッグともいえるARの絶望カルトな自爆テロ紛いの暴走。本作と霧の童話は、それを言葉少なに先見してしまっている。

2017年3月10日金曜日

袖志の女

なんか、もしかしたら本作この話。子連れ狼版の闇の奥で。地獄の黙示録を先取っていたのではないか。最後のグズグズな破綻っぷりも含めて。やはり奇っ作。女だけの山岳民族仕立ての特殊部隊。そして人としての情けからの、その完全殲滅。無や空や政略を武士道や男の友情や家族愛が一瞬ではあるが超えた幻のユートピアをここに筆者は見、感動する。まぁ、しかし、その風景。とにかく荒れ果てた造成地をロケ現場とした、その見事なまでの低予算っぷりと満身創痍の一刀という殺伐荒涼とした全シリーズ通じての記憶に残る凄まじさのディストピアだが。やはり有事のフィリピンのジャングルをロケ地とした地獄の黙示録に通じる一種の事件的作品。そう考えると地獄の黙示録は大作とか大いなる失敗作とかというより初期衝動の映画。まさに暴動の映画ではなく映画の暴動。ロックの映画ではなく映画のロック。

2017年3月8日水曜日

24年目の復讐

二人が水棲人間を誘き出す箇所で水棲人間が水に濡れていなかったのは逡巡していた証で味わい深い。牧が単独で街に消える箇所もイイ。流れるリズムセクションだけのモダンジャズ。あっ。こういうのはピアノが無くコード感が薄くモードっぽいのでモダンジャズというよりはフリージャズと言った方が良いのかも知れない。しかし格好良い曲だ。線路上を歩く風情。行方を追うメンバーや刑事達の大所帯は地獄の黙示録のカーツ捜索隊のようで又ヨロシイ。自爆シーンのミニチュア特撮はオープニングの港の夜景と対で、やはり本作も青い血の女と同様にフィルムノワール感が横溢しているからか何故かヒドク筆者は惹かれるのだ。

2017年3月7日火曜日

ジョーズ2

子供達の手作りヨットによる廃燈台岩礁への冒険海上ロードムービーな感じは非常に良かった。大魔神逆襲を思い出したゾ。犠牲者も少なく残酷描写も殆ど無い点が子供向き子供向けで好印象。ジョーズの造形や操演もメカメカしく良い意味でぎこちなくてロボ感強し。これはこれでサメ物というより殺人ロボット物として観ればオモムキがある。事実やられ方も火花散らしながらの感電死だし。

2017年3月3日金曜日

地獄のバスツアー

上から目線だが結構、感心した。ご都合主義なシナリオは昭和な感じで賛否あると思うが、とにかく小技と小物が効いていて画面が、お洒落で良かった。路線バス、密室集団劇、食べ物、殺風景な倉庫、猟銃、カウンターベジタリアン食堂、機動警官隊、小粋なニューヨークな70年代海外クライムドラマのテイストを感じた。これで音楽がバッチリきまっていれば傑作回と後世に胸を張って言えたかも。とにかくサブタイトルが最高。地獄のバスツアー。実は乗り合わせたのはマリコではなくアンドロイドで倉庫に駆けつけた科捜研メンバーの大ウシロに白衣でラスボスっぽく控えてたりしたらコレマタ、アメリカンばかSFで面白かったりするかも。