2020年10月21日水曜日

かまいたち

 地下街の夜。街はずれは川と橋ばかりの町。街工場の騒音と排水の流れる音が一日中ラジオの音に入り雑じって辺りに満ちている。上空は煙突の煙で昼尚暗くすぐそこの手の届きそうなガスタンクの屋上すら有色ガスで見えない。不思議な事にこの界隈にはマンホールが一個もない。たぶん街で一番の低地であり最も底に該当する地区なのだ。ゴミばかりでなく人も流れ流れて吹き溜まる。ぬかるんだ酷道の両側にはビデオカフェかマネキンを飾ったパチンコ屋しかなく舗道には錆びた廃玉や濡れたエロ本が棄てられ踏んでしまうと転んでしまい危険極まりない。よく見るとシャブやピストルの玉のような物も混じっている。治安も悪い。どのビルの壁面にも窓はなく排水口がいくつも並んで口を開け汚水を始終垂れ流している。臭い。以上。囚人カマイタチ氏の専任歯科医が覗いた。氏の。口腔内風景。

2020年9月16日水曜日

雑音と無音の因果律

エレベーターや地下鉄の怖さは次に停車する場所で起きている事がたとえ先頭車両にいたりモニターカメラがついていたりしたとしても乗客からの視界が酷しい為これが地上だと明るさ開放性から線路上に異物があったりしても確認しやすいのだが目視できず緊急停止できなかった場合は自動的に次停止場所まで強行し停車してしまいそれどころかドアまでもが自動的に開いてしまうところ。最近のエレベーターには外から中を見れるモニターがついている場合もある。でも次階のエレベーターホールの様子が内から見れるわけではない。まぁそれだけでもじき到着するエレベーター内に怪物がいる場合にはわかるのでありがたいが。でも幽霊だとカメラに映らないのでドアが開いてビックリなんて事も。さて地下鉄車両においても車内から次のプラットフォーム上で何が起きているのかを確認できるようにならないだろうか。プラットフォーム上で暴れている怪物が乗り込んで来て修羅場と化すのをそれで避けられるのだが。事実は小説より奇なりでプラットフォーム上を発狂スプレー噴霧しながら駆け抜ける奴なんかがでてきたりしたらと思うと。おちおち音楽も聴いてらんないしスマホも弄ってなんかいらんない。恐ろしい世の中になったもんだ。

2020年9月15日火曜日

果てしなき暴走

端から白眼が充血していくのではなく黒眼中心から血走っていくという仰天発想またそれを見事に再現した光学特撮のセンスの良さにまず脱帽。いかにも脳の深部から狂っていってってるって感じが伝わってくる。ダサい出で立ちで一見浮いているようにみえる助さんの自らが実験台となってのハイウェイでの排ガス採集ミッションだが。これがあることで本作がいかにブレードランナーにせまるsfフィルムノワールであるかがよくわかる。ご丁寧に脱出後に車が落下炎上する場所が荒涼とした墓場というのもいかにも近未来ディストピアだし。やはり近未来ホラーの超傑作フェリーニの悪魔の首飾りにでてきたハイウェイを思い出した。

2020年9月2日水曜日

渋谷怪談 THE リアル都市伝説

隙間男って実は黴男ではないだろうか。毒々しい緑色してたし。押し入れの上や流しの下など黴の生えそうな所を胞子状になって自由に往き来できるのではないだろうか。だから隙間の向こう側の暗闇は四次元空間のようにさえ感じられ。ラスト。主人公のトイレに逃げ込んでのくだり。その絶対的無意味さ。からの。絶望感。と。きたら。さらに考察して。隙間男の犠牲者なんだけど。色こそ緑色ではなかったが。全身の表皮がやはりぬめっとした何かに覆われていた。あれは。やはり。あの姿は黴男の胞子に感染。ということなのでは。そうなると小中学生向け学校怪談っぽくお茶目な妖怪じみて語られているが隙間男。ってオトナのsfホラーオタク目線だと。感染としての。さらに性感染としての。象徴。と。必要以上にリアルに捉えなおせ。で犠牲者が全て思春期ザカリ美少女ということも考えあわせると。これはかなりヤバい。し怖い。

2020年9月1日火曜日

かかし

和ものだとロボットって鉄腕アトムからきているのだろうがイイモン役がおおいけれど洋ものだとロボットって逆にロボコップとかの正義派のほうがすくなくゴーレムやフランケンシュタインとか結構バケモンとか悪役ってかんじの伝統がつよい。これ本作も本来は笠地蔵などの方向性にいくべきなのだろうが叙情心情どころかまったく正反対にいっちゃってる。だからおもしろい。それどころかテッテー的に即物的にえがかれててかかしがまるでモンスターのようなあつかい。かかしのボロボロさが壊れかけのあのターミネーターにさえみえてじつにホラーしてる。ラストももやされるというようなスペクタクル描写にさえなっていて舞台がのどかな日本的田園風景なぶんよけい無国籍無歴史な異様な舞台設定にさえ異化されみえてくる。のどかな昭和田園風景に地底ロボットや巨大原子力宇宙船が登場し宇宙戦争の戦場。不条理ディストピアとかすあの東宝特撮映画の怪作。地球防衛軍のようだ。比較し本作けっしてほめすぎとはおもわない。傑作である。

2020年8月27日木曜日

吸血地獄





崖っぷちをドライブ中のカップル文字通りだし何かを象徴してもいる。運転する男がやたらハイテンション猛烈に事故のフラグがたちまくっている。酒に酔っているのかヤクでもキメテイルノカ案の定対向車をよけきれず正面衝突いやよけたせいで崖下に落ちたどっちなのかその辺が曖昧なままフロントガラスが割れアニメっぽく人工血液が飛び散るという抽象的な象徴カットで画面は葬式現場に切り替わる。ここの切り替わりは何度観てもぶつぎり感が凄くやはり極めて異常としか言いようがなく加えて死んだ女の棺から取り出したのか棺に納めようとしているのか男は薬物の小瓶を手にしこんな物飲まなければなどと言っているこれもよく考えると変何より葬式の様子が変その他大勢の振る舞いが全員よそよそしくバラバラで勝手なことばかりしている我関せずで現実的手ごたえが全くない。変なところが長回しだったり変なところがワンカットだったり。兎に角変何か普通と違い浮わついていてドキュメンタリーっぽくも陳腐な学芸会ノリ再現ドラマっぽくもある。円谷一氏の演出の他の作品ウルトラセブン侵略する死者たちの冒頭第三病院をフルハシが訪ねた時の院長の応対のちぐはぐさとかウルトラqあけてくれの冒頭一平がおいてきぼりをくらう所の唐突さとかよく似た異様さなのだ。やはり本作もうすでに冒頭から異次元トリップ夢おちなドラッグフィルム感バリバリに振り切れてしまっている。そんなツブラヤハジメ氏はさりげなくなにくわぬ顔でドラマにメタフィクションという地雷的なモンスターをここ怪奇大作戦でも子供相手に平気でぶちこむようなそんなナイスオトナコドモな屈折好漢なのだ。結局本作ラストのナレーションまで視聴者まきこんで大風呂敷の大嘘っぱち真実は崖下に落ちた車だけ投げ出された男女だけ海岸なのか山肌なのかはわからないそんなマットペイントカキワリ状の岩の隙間にアニメっぽくドクドクと満ちる人工血液郵便配達は二度ベルを鳴らすを観たくなるくらいな乾いたハードボイルドさだ。本作の実体そんなエンドロール部分冒頭の事故シーンとこのシーン正味それだけであって吸血鬼がどうとか死後復活がどうとかドラキュラの末裔がどうとか実はすべてなかった事なのだ。ただヤクはヤクをキメての運転はアブナイですよとさらりとながしてうまくかわしている様子だけなのだ。スポンサーが製薬メーカーだったり売血など当時の放送禁止の時事的話題をあつかっていたりというのもあるかもしれないそれだけただただそれだけな良い意味での陳腐すぎるストレートすぎるテレビ三面記事ウィークエンダー再現フィルムそのものな内容。そうだからこそ本作まさに奇跡的暴力的ヤケッパチ青春ドラッグフィルムたりえている。成功失敗を越えた作例で筆者はその魅力にハマってしまって金輪際ぬけだせそうにもない。ウルトラの父と母ともいえる名コンビが最後に放屁したアニメとドキュメンタリーとベタすぎる特撮が渾然一体となったパンクな作品。


2020年8月6日木曜日

エレベーター

安全上。最近はホームドアどころかモノレールのとかはホーム全体がガラスばりの駅さえあって安全かつ近未来な感じがして良い。でもたしかに駅って色々あって。モノレールはプラットホームが空中なので危険だからガラスばりなのはわかるとして。古い地下鉄の駅なんかどこまでがこの駅のプラットホームなんだよってくらい長く横にひろがって闇の奥に続いているなんてのもあった。このままいけば隣の駅と柵で隔たれた地点さえあってホームがつながっているんじゃないかとか。または。途中の夕闇の中で田舎の無人駅のホームのようにとぎれてしまっていてそのまま今は使われていない廃線線路上にポツンとなげだされおき去られるんじゃないかとか。色々妄想がひろがってしてしまう。さてさっきの近未来駅だが。それだとまるで駅がエレベーターホールと変わらなくなってしまいということになってさえしまい今度はエレベーターで妄想がひろがってしまう。エレベーターの坑道内を何機ものカゴが電車のようにはしっているのだ。もちろん。時刻表どおりに。だ。カゴも車両連結化しててホームというかホールというかそのドアも複数。エレベーターホール内には壁画製作現場でみられるような鉄骨足場みたいなのが持ち込まれている。そんなヘンな妄想。それどころかエレベーターが走っているのも球形の上の線路のように無限軌道上だとさえ考えてさえしはじめてさえしまうのだ。例えば地下のない一階どまり本マンションのこのエレベーター。無限大の山手線。ターミナル駅で終わりではなく終着駅の更にその先その先。じつは無限に深いエレベーターピットを有している。階数表示されないが裏操作取説がある。分厚い時刻表だって我が管理人室には完備されてさえいさえさえするのだ。底には地下水や比重の重い有毒ガスや一酸化炭素が溜まり死体が折り重なっている。何機に一機かはそんな冥界への下降用として幽霊達に使われている。反対に上り線だってある。いつの間にか誰もが自分は今エレベーターに乗っているのか電車に乗っているのかわからなくなる。だってほらもはや現代人はエレベーターのgを電車の加速と同じように感じなくなってさえしまっているではないか。リアルとヴァーチャルごっちゃになったネット社会。のように。そうなるとエレベーターの坑道も地下鉄の坑道のようにその闇の中すみずみ魑魅魍魎がゾンビたちが満ちてくるんじゃないかな。そんな気さえしてくる。

2020年7月27日月曜日

リモートで殺される

これは寄宿女子学院を舞台にした閉鎖空間少女漫画風ホラーである。あのサスペリアさえ思わせるような。最も怖い点。なぜ次々とリモート画面越しに殺されているのに誰も部屋からにげようとしないのか。だ。普通そうする。それは逃げられないように学園当局側にそうされてしまっているからだ。そう。彼らはドラッグ遊びの罰として学園当局に各々その後その心の独居房に幽閉されてしまった。共犯者イシキは深刻でこのジゴクなシナリオ設計。スバラシイ。だからリモート。そんな闇をかかえた者同士おこなうまるで歪なコックリさん的降霊術儀式めいてブキミに成立しまくっている。そりゃ皆こころの密室状態で逃げられない訳だ。そう自分は解釈した。そしてこのココロの寄宿女子学院こそ実は。我々みずから今ハマって抜けられなくなってしまっているモバイルコロナディストピア世界その比喩ソノモノ。本作マサに着信アリのリアルタイムバージョン。で。楽しめた。キャスティングも不穏でナイス。やはりリング回路着信アリこれらデジタルテクノロジー系ホラーの系譜は面白い。自分ワンセグで観ていたのだが途中で電波不良を起こし画面が例のカクカク状態に。丁度ネカフェ殺人シーン。また。それが。雰囲気で。雰囲気で。もしかして?みんな?そう?

追記。屋上でサボりがちの孤独な超能力少女を同級生達がイジメでアジトの体育倉庫に監禁し透視実験を強要したら学校全体が負の力に呪われている事が判明。彼女の超能力をしても同級生を守りきれず同級生達は次々に殺される。

2020年2月5日水曜日

雪崩

ガードマン側からみればルノワールの名画輸送ミッションのフィルムノワール。脱走犯側からみれば山岳ロードムービー。おいしいところどりである。のっけからツインピークスばりの不穏な音楽と製材所などの郊外風景。やっぱり白黒映像はカッティングの。編集の。妙がいきる。白黒画面の雪の山脈ははるか日本ばなれ現実ばなれしていてじつにノワールなうつくしさだし。ロケの大変さもつたわって。やっぱり初期のザガードマンはチカラのはいった名作である。マナベ参謀の白衣の名画修復師が円谷なsfムードをたかめてくれていてうれしいかぎりのでだしでもある。途中国道から酷道へはいるあたりからはまたべつのこんどは網走番外地っぽい大人なムードにシフトチェンジだ。でも。なぜか筆者的にはウルトラq。ガラダマやガラモンの逆襲をおもいだす。まとめてセットにして観賞しよう。さて夕闇せまり。ご都合主義な不整合感もありゴシックでダークなかんじな限界集落のポツンと一軒家。繰り広げられるドロドロの男と女の愛憎。その女が岸田今日子だったらもうこれは。砂の女。なんだが。でも市原悦子もそれにせまる不条理なたたずまい。そんなファムファタールさのおかげで。そのスペクタクルな幕切れはもはやカフカの城のような唐突な強引なまとめおわりで不条理感特撮感sf感さえただよっている。もしかしたら遠景のアルプスは東宝特撮のようなマットペイントだったのでは。いやはやじつにすきなテイスト。高橋悦二がガラモンにみえてくる。いや等身大だから不良ピグモンか。その怪人っぷりはじつにいい。登場がバイクファッションだったからか。大友克洋の漫画ハイウェイスターのあのダークヒーローのようなかっこよさだった。

2020年1月26日日曜日

女王陛下の007

アルプス山中で細菌兵器としての高級娼婦を育成培養。し。彼女たちどこかクローンっぽい。世界の要人へとばらかんものとするまさに女の敵中の敵のような近未来型ドラキュラ伯爵そのものなスペクター首領ブロフェルドをえがくダークすぎるホラー映画中のホラー映画だ。その設定のグロさキャスティングのシリアスさは鬱映画一歩手前。このギリギリ感がサイコー。たちむかうのがシリーズ中異色中の異色の超フェミニスト型007ボンドということでタイトルの女王陛下の云々というのは最高にマッチしている。まちがいなくぶっちぎりのシリーズ最高傑作。本作の遺伝子なくしてシリーズの21世紀までの延命はありえなかった。同時にこれさえあれば22世紀までも延命可能そう。だ。ともいえる。まさに重厚長大冷戦マッチョ時代価値観当時における駄作失敗酷評作が100年スパンで古典的芸術作品化するのをみるおもい。まさにシェイクスピア級である。そのドロドロな脚本世界にスピード感のある無機的な切り返しの速い編集の映像が乗っかる見事なコンニチ的サマも。なんともいやはや時代先取りである。古さを全く感じない。本作もはやそのアクション場面。ホラー映画のショック場面それと同質の物と化している。痛みさえ伝わってくる殴りあい。暗く底無しの谷底におちていく悪党たち。極めつけは雪かき機に取り込まれ肉塊に。そして。なんといってもこれでもかの人工雪崩のホラーな描写。まさにまさに皮膚感覚レベルでしっかりとした体裁のホラー映画となっているのには。まいったというしかない。でも。腹一杯になるどころか何度もすぐに繰り返して最初から見直したくなるバランスのとれた硬派なゴージャス。さ。がある。そう華麗なアクションや美しい風景によってしっかりとオブラートされているからだ。見事というしかない。こういう作品をこそ私的偏愛フェイバリットというのだろう。