2020年10月21日水曜日

かまいたち

 地下街の夜。街はずれは川と橋ばかりの町。街工場の騒音と排水の流れる音が一日中ラジオの音に入り雑じって辺りに満ちている。上空は煙突の煙で昼尚暗くすぐそこの手の届きそうなガスタンクの屋上すら有色ガスで見えない。不思議な事にこの界隈にはマンホールが一個もない。たぶん街で一番の低地であり最も底に該当する地区なのだ。ゴミばかりでなく人も流れ流れて吹き溜まる。ぬかるんだ酷道の両側にはビデオカフェかマネキンを飾ったパチンコ屋しかなく舗道には錆びた廃玉や濡れたエロ本が棄てられ踏んでしまうと転んでしまい危険極まりない。よく見るとシャブやピストルの玉のような物も混じっている。治安も悪い。どのビルの壁面にも窓はなく排水口がいくつも並んで口を開け汚水を始終垂れ流している。臭い。以上。囚人カマイタチ氏の専任歯科医が覗いた。氏の。口腔内風景。