2021年2月16日火曜日

あけてくれ

 ユートピアとディストピアは紙一重なのだ。サラリーマンの悲哀というよりガチガチのaiが支配する監視社会管理社会ディストピア物語として観た。完全に濃密過ぎでウルトラqを逸脱した独立な短編映画の名画として成立。カーラジオからの尋常でない渋滞情報はまるで首都脱出のようなウィルスか何かのパニック感ですらある。突如。黒封筒に施されたペーパーディスプレイ越しに出現する友野の顔はまるで1984年のビッグブラザー。ハタマタ赤死病の仮面のプロスペロー王。汚染された下層現実社会から。ヒトリ。逃れ。君臨。aiの神に仕えるカルトの教祖のようでもある売れないsf小説家友野。監視社会管理社会へ直行のインターネットaiテレワーク引き籠りの今日の如き不要不急業従事者の現状。を風刺予言しているようで本作。自分の中ではその脚本も徹底して硬質なのにどこか粘着質で不穏な演出もダブル主演の柳谷寛氏と天本英世氏の名演もゼンブ含めゴダールのアルファヴィルに並ぶ逸品。地下深く見知らぬ都会の隅の自動運転エレベーターで潜って底にあった海に浮かぶユートピア。その造形が何とも遊園地。地下に降りたはずなのに青空と海のデパート屋上ってなここのシュールさは諸星大二郎の漫画にもあった。宇宙ステーションから自動車から何から何までインターネットに繋がり空を飛んでいる。ラストでは相変わらず柳谷氏が千鳥足でさ迷う。もはやゾンビ状態。電車が空を舞う夜の雰囲気。どこかそのヤケッパチさが酒場街にある映画館で観るフカサク東映ヤクザ映画テイストもありツボだし。更に四次元列車から帰還しただけなのに精神病患者どころか高リスク感染病者のように厳重真空減圧強制隔離された女性も怖い。怖すぎる。壁には。この女性が描いたのだろうか。暗黒宇宙絵画。まるで映画マタンゴかエイリアンを想起させクトゥルーっぽい。追伸。洋館お手伝いさん小田急ロマンスカーの3点セットはそのままウルトラセブン緑の恐怖に。円谷一氏のそのメタな遊び心と絶望セカイ系体質に目眩しそう。