2017年6月9日金曜日

24年目の復讐

特に後半の猿島での一連と所内での一寸ながめの戦争談義からやはり本作はまぎれもなく終戦にかぶせた御盆の怪談そのものなのではとおもうようになった。島で再会する千恵子がどうもあの千恵子であって千恵子でないような気がしてきたのだ。どこか亡霊か巫女めいてさえいるようにおもう。手わたされた柿はまるで霊性がそなわっているかのように牧は一気に戦争の幻覚へとひきこまれていく。そしてそのままみちびかれるように水棲人間の住居へだっていきつく。そしてなによりもモーターボートはためこむだけためこんだダイナマイトをのせてつっこむかとおもわせ自爆炎上する。多分水棲人間は一大決戦の時の為にとその潜水能力を酷使し色々な所から武器弾薬をぬすみあつめていたのだろう。それなのにだ。何かにみちびかれているようにしかおもえない。そのはかない花火のような火柱だって今ふたたびの真珠湾攻撃や神風特攻というよりなにか鎮魂の為のあの川へとながされる灯籠ながしその物のようにさえおもえる。そして所内での牧の謎かけとあのオチである。どうだろう。怪談してはいやしないだろうか。

2017年6月7日水曜日

バラージの青い石

バラージはこれで神を祀る必要がなくなりチャータムは神性と超能力から解放されもしかすると苦界に身を沈める遊女のようにどこかの王の下にでも嫁ぐのだろう。このまま老人達に交じりありふれた宿場の女として老いてゆくとは思えない。今いる老人達と共に静かに滅んでゆくバラージの姿を遠くから見守るようなどこまでも哀しい宿命の女の姿の方が似合っている。やがてこの紛争地帯も未消化の鉄屑が砂に混じるアントラーの巣だけが主を失い寂しげに点々とするばかりの兵どもが夢の跡の古戦場めいてゆくのだろう。

2017年6月3日土曜日

ダン対セブンの決闘

ウルトラファイトのもつあの白昼夢のような世界が巨大なスケールでえがかれる。全編とおしてまるで江戸川乱歩のあのパノラマ島での出来事のようだ。タイアップのせいか夏やすみの家族旅行で一人およぎつかれてめざめたら誰もいないホテルの一室。そんななんとも表現しがたい不思議な感覚に丸一日おちこんでしまう蜃気楼な本作。