2017年4月9日日曜日

獣人雪男

なんとも不思議な味わいの本作。思いのほかテンポも良く、メリハリもあり、古さを全然、感じない。充分、ゴジラ第一作に肉薄する出来。少なくともゴジラの逆襲よりは良いと思うし、個人的今一作品、モスラ対ゴジラにも、本作のようなテイストを自分、望んでいたのだと噛み締める。全編、駅の待合室での回想と言う設定が、これまたクトゥルー物っぽく、暗黒宇宙的スケールを感じさせる。序盤は正統派雪山ミステリー。中盤は三つ巴の山岳アクション。そして終盤が特に味わい深い。たしかにロストワールドな秘境探検物ではあるけれど、ここでの雪男。一族の最後の生き残りとして、骨の散らばる洞窟の奥に、孤独に暮らし、その姿には、ゴシックムードさえ漂い、崇高なカタコンベの墓守にさえ見える。同時に、異星や人類滅亡後の地球にサバイバルした、伝説のダークヒーローにも思え、雪男の身の上に何故か深く同化してしまう。街や研究所などの近代的アイテムが一切、描かれていない。唯一、珍獣ブローカーのトラックだけ出て来るので、まるで自動車が宇宙船のように見える。だから善玉であるはずの主人公一派も含め、我々、都会人側の方が悪の侵略者のよう。怪獣物と言うより東宝特撮には珍しい、早すぎたエイリアンな、SFホラー物で、変身人間シリーズから、ちょっと浮いている、あのマタンゴに通じる作風。よって村人の異形を障害者的差別表現とし、ソフト化を自粛するのは全くの的外れ。あれは近親混血の結果での奇形ではない。バンパイアのように、各人、猿やら狼やら熊やらとの混血の結果で、立派なミュータントでありハイブリッド人間。村人全員それぞれが魅力的なモンスター達の、ティムバートンマナーなアダムスファミリー状態なだけ。確かに医療不足から怪我などの後遺症での不具者は何人か居ただろう。治療その物は出来ない。しかし施療者に判断基準を与え正確な治療指針構築の手助け位にはなる。ホラーの効用なんてそんなもの。以上でも以下でもない。

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