2019年1月18日金曜日

愛の亡霊

メキシコ革命期の荒野を舞台にした特撮西部劇恐竜映画があるのだけれどもみていてたのしいものである。そんなたのしさにつらなるものとして邦画ならではならば。股旅ものに怪談ものをからめたものがある。怪談昇り竜とか東海道お化け道中とか。そんな中の一本に本作もいれたいといったらおこられるだろうか。音楽もすばらしくオープニングがまずいい。人力車だが。まるでタクシードライバーのオープニングのあのぬるっと登場するイエローキャブのようだ。車屋儀三郎。屋号は車儀。人力車夫。体力勝負なある意味侠客である。酒もつよい。そしてそのかれがちいさいながらかまえた一家そしてその家屋。中世の古城ならぬ旧日本家屋だが黒びかりして重厚。そこを舞台とした昔気質の漢の年代記であり立派なゴシック劇である。それもヨーロッパというよりアメリカ中西部が舞台のトラック野郎ものにしてもにあいそうな。それくらいかわいた荒涼がひろがってる。そうどこか郵便配達は二度ベルを鳴らすをおもわせるところさえある。そのへんがにたようなジメジメした村視点のみでえがかれたやすっぽいよくある村落日本映画とはひとあじもふたあじもちがっている。あくまでもハムレットやリア王などのシェイクスピア作品にもつうじる主人ののろいが城におよび末代までたたる的なそんな中世大悲劇である。そしてサイコのような。いきなりあれだけ前半存在感をはなっていた主人公が。突然暗殺者にのりこまれあっけなくころされてしまって後半主人公が交代して別の映画のようになってしまうというところのメタミステリー映画でもある。田村高廣から。刑事というより私立探偵っぽい駐在。川谷拓三に主人公がチェンジしてしまうのだ。田村高廣パートはまるでゴッドファーザーパート2におけるデニーロえんずるところのビトーパート。とおい過去。どこか日本昔ばなしのようなえがかれかた。カメラもおくゆきのあるローキー。川谷拓三パートはまるでパチーノパート。カメラはハイキーで。画面はいかにも平面的で三面記事的で現代的な画質へと変化。パチーノと川谷。共通するはそのニューロティックさ。かも。ところで儀三郎暗殺の犯人グループである。吉行和子と藤竜也。どこか無自覚な。罪をおかしてあとになってはじめてことのおおきさにきづくテロリストのようにもみえる。でまくってはいるがどこか存在感がうすくストーリーをすすめるためだけの狂言まわしのようにもみえる。もしくは黒子か文楽人形のよう。それくらい近未来人的で。その性交場面さえ無機的にみえる。それはとにかく。田村高廣がほんとうにすごい存在感。たとえ分家の分家そのジナンサンナンでちいさなヒャクショウヤの出であったとしてもいまや家族をおもう家長としてのイダイサ。車屋という下層だがれっきとした職人としてのプライド。べっとりとその家屋にぬりこめられ。たかのようなそんな重厚な家屋の美術セットとそんな家屋をとらえるカメラはほんとうにすばらしい。アルジをうしなってからの家屋はというと。ひとりのこされた吉行和子がそこを舞台にしてじょじょにくるっていくすさまじさ。長女もイエをでていくし。ボヤをだしやけのこり再建されてからの家屋はというと。いよいよ廃墟感がすさまじくなる。もしかして長男はやけしんだのか。なんとも不穏な雰囲気の美術セットとカメラ。このゴッドファーザーパート3のコルレオーネ家のような家族没落のサマはなんともすさまじい。この段階で二代目当主な顔をしてまるでベトナムがえりか南軍くずれかのような藤竜也がイエへところがりこむ。と。冒頭とそっくりな儀三郎不在宅既視感な二人のブキミな密会シーンに不思議突然もどる。いきなりのタイムループ感。しかし。儀三郎の天の声。いや地の声か。それがまたもかぶさる。それもこんどは地獄の底からのようにまがまがしく。それはそれはおそろしいシーンだった。一瞬みているこちら側の精神までいかれてしまったかとあわてる。この手法。監督の必殺技で。帰ってきたヨッパライでもつかわれていたが本作ではより洗練されさえわたっている。もはやはやすぎるタイムループホラー映画といってさえよい。かくしてもろともに田村高廣ののろいは二人におよびジェットコースターのように終末へ。森の中の地下室のような古井戸から発見される儀三郎の死体もそんなふうにしてみなおしてみると八つ墓村の洞窟死蝋やリングの床下井戸をはるかにこえてはるかにおそろしくうつる。というよりどこか王や神のミイラのようなこうごうしささえ。いやはやクロサワにひけをとらない。クロサワにはやはり夢という特撮映画があるが。いやそれ以上な。あのぶっとい梁の日本家屋のもつ漆黒の魅力のもと。あらゆるものすべてがしらずしらずのうちにうしなわれていってしまっていた転形期薄明時代。その霧と闇にうごめく魑魅魍魎を存分にとらえきって。あっぱれな世界のオーシマ日仏合作逆輸入特撮怪奇映画。

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