2018年9月14日金曜日

バイパスの夜

タイトルからしてクールな。まぎれなきフィルムノワール。そぼふる雨。あまい焦点の。にじんだような画面。山間の峠での車中という閉塞空間。心中発話モノローグの応酬。トレンチコート。サングラス。煙草。対向車のヘッドライトによる光そして闇。雷鳴。稲光。犯罪。逃亡。不義。密通。復讐。そしてなんといってもフィルムノワールにはなくてはならない存在。ファムファタール。でも。彼。女。は。トランクの中。ウソかマコトか。いやはやおそろしい。原作は手塚治虫。手塚治虫にはもうひとつのブラックジャックともいえるミッドナイトなる無免許シロタクカミカゼタクシードライバー主人公のダークヒーロー漫画があるがそんなヤバいタイプのドライバーが本作の主人公だ。裏道速度違反もあたりまえに犯罪者の逃走などの片棒をかついだり禁制の品をはこんだり土地のアイマイ宿へ客を斡旋したり。また本作のようにいつ凶悪犯に乗車され被害者側にまわらされるともかぎらない。そんなデンジャラスでまさにクールな都会の深夜の闇がにあうフィルムノワールには格好の素材タクシードライバー。そんな主人公と逃走中のギャングの一騎うち一対一の心理戦。沈黙の中。はげしい雨音とカーラジオのニュース音が緊迫感をたかめていく。しかしそれは突然のあっけない幕ぎれをむかえる。

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