2018年7月16日月曜日

プリズナー

ネオンサインのきれかかったつぶれそうなビデオレンタル店。どうやら郊外の裏どおりに位置しているらしい。ショッピングモールの一画か。その。声がひびきわたるほどのひろさ。客足のすくなさ。店のまわりにビルもあかりもなさそう。そのどこかトモダチに冷凍工場裏のアソビバでみすてられた黄昏時のような。うらさびしさ。竹中直人のその廃怪人っぽさはこの後の実際のネットカフェ難民やネトゲ廃人の大量発生をかんがえると世紀末ゾンビ現象のはじまりのようで薄気味わるい。なんかその風体が一番おそろしい。しゃれたオチも文字どおりのさむざむしさだ。当時はもりあがるホラーだったのだろうが今みるとオウムやバブルのあの時代のひややかな空気感の方がつよく刻印されてしまっている。そしてやはり本作も下水道映画の傑作である。主人公が吸収されてしまった場所あれは牢屋のようにみえるがあれは地下水道施設によくある鉄の柵それにあれは他ならない。事実水のしたたる音を当初あの空間ひびかせていた。魂のダークサイド。ダークマターにみちた暗黒宇宙。そんな下水道世界。本作はそのタイトルからもわかるとおり。ビデオをめぐる都市伝説ではおわらず。もっとひろく二流三流文化つまり廃品のようなジャンクビデオをはじめ。スカム作品ばかりめでてきたような筆者のような今もネットの底にうずまいているような下流無名ブロガー水子表現者の乱泥流。つまりハイカルチャーを上水道とするならば下水道文化としてのサブカルチャー。アンダーグラウンドの汚水にまみれすぎてそれが実体化したような人々。文化ゾンビとでもいおうか。理系ゾンビはナニカト話題になる。かといって文系ゾンビにもなれなかった帰宅部系いや金もコネも汚部屋さえももてないヒラキコモリ系サラシコモリ系ゾンビ。そんな人々のことをえがいている。そういう意味での下水道映画で。しっかりその雰囲気がでているという意味においても。本作。筆者。独断で傑作とするものである。竹中直人の役の男のような出自の男がすくなからず街の雑踏にはまぎれており今日もあてどなくさまよっている。そんな気にさせられる。世にも奇妙な物語。初期の傑作。

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