2018年3月19日月曜日

過ぎし日

そのむかし警察とはガス灯を点灯する者、であったという。都市文明論的な犯罪抑止の基本とは、を考え直すには良い例である。犯罪抑止といえば本作の主人公はタイムスリップする者の方ではなく、その未来から来た不審者の、リンカーン暗殺予言をひとり信じようとした警察官の方である。以下ネタバレ注意。暗殺はその警察官によっても阻止できなかったが、うかばれなかったその警察官のホテル従業員のその子孫が、歴史の微妙な改変によって、街の防犯名家として名士となっていたというのが、本作のオチである。それはどこか笠地蔵的な小さな慈善が報われる、おとぎ話的ホノボノさに満ちている。まさに地道にガス灯を点灯してまわった当時の地味な警察官の仕事、それこそが実は科捜研とか解剖法医学的な物であり、現代において立派に花ひらいた、そんな事をツクヅク感じさせる。本作そういう意味では、或る過去の記録に残らない人情駐在さん物語、として観ると実に面白い。苦い物語だが一筋の光があるという点ではミニ砂の器級の名作としたい、気も。

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