2017年5月26日金曜日

蒸発都市

逃避願望ひいては人間蒸発。オウムのように若者を惹き付ける宗教団体施設とか暴走集団アジト。そんな一寸うすよごれたイメージさえ浮かぶ蒸発都市。ひんやりとしたビルの谷間ひびき渡る声とともに蒸発したダンの面影を追うアンヌその足先に当たるダンの持ち主を失ったレーザー銃。このシーンが抜群に好きだ。qのガラダマのラストのようなひややかさ。本作はダンの蒸発というワードもテーマだ。ダンとアンヌの深いほりさげがさすが。けっきょく暴走族のイメージってイージーライダーな逃避の都会版だと思う。1950年代アメリカのホットロッドとの直接的な繋がりは薄いように思う。つまり生粋の都市文化ではなく。というより郊外型表層文化その都市流入の先駆けといった側面のほうが大きいような気がする。逆にいえば暴走族映画たとえば狂い咲きサンダーロードなどは郊外に架空の都市が存在したという設定なので郊外に蒸発した都市が突如として出現するという本作とは実によく似た構造の作品だったのではないかと思う。場違いに郊外に出現したビル街や破壊神ウルトラセブンが放つその薄っぺらな嘘臭さは昨今のショッピングモールやテーマパークが放つ中華ポストモダン臭それのように感じられる。そういえばきれいさっぱり車の消えた大通りセブンとダンカン巨体どうし猛スピードで追いかけっこその都市の疾走感まさに我が物顔の族と白バイ。アンヌとフルハシのコーラの件もなんかハスッパでそれっぽい気分だし。彫刻化した警察官の眼が監視カメラなんてのも妙に印象に残る。そんなふうにして本作qのクモ男爵やマンの恐怖のルート87そして占い霊媒繋がりなファミリープロットや黒い罠を彷彿。サイコビリーでサイバーパンクなアメリカ南部ゴシック調の郊外型ロードサイド系フィルムノワールとしてみなおすと新しい発見に満ち満ちていて飽きのこない逸品に筆者感じられて嬉しい。アンヌとフツハシが迷い込むビル街はなんかサイコのベイツモーテルにも通じるホラー調で敵の潜むコントロールルームには離れの母屋みたいな不気味ささえある。この一寸ジャンクなフィルムノワールな味わいはどうしてもアートしちゃうヌーヴェルヴァーグな実相寺昭雄演出にはない円谷一演出の独壇場で真骨頂。キリヤマ隊長の明日を捜せでも見せた暗黒街物っぽいニヒルキャラ。フルハシ隊員のドライアンドクールな敵秘密部屋潜入破壊工作。タケナカ参謀と霊媒師ユタ花村のホテルでの密会めいたアダルトな会見。側近の老婆がいい味で掛かってる音楽のダビーでサイケなことサイケなこと。この疾走するモンドな断片寄せ集め感はやはりウルトラセブンというよりウルトラマン。みどころ多し。ききどころ多し。つっこみどころのダンの行方とビル街の放置も以上のような見方だと逆に効果をあげているのでは。

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