2016年12月10日土曜日

宇宙大怪獣ドゴラ

石が降る。その旧約聖書めく事象のおかげで本作は陳腐なsfに終わるのをしっかりと免れている。実はこれはこれで実に凄いことなのだ。しっかりと暗黒宇宙神話のヤバいダークマター感を撒き散らしクトゥルーやウルトラqに連なる世にも貴重なコズミックホラーの先駆ダークファンタジーの傑作たりえている。もちろん特撮によるところ大なるはせんこくごしょうち。ただし、それだけではダークファンタジーたりえない。単なるミステリアスな悪女を越えて暗黒宇宙の邪神にさえ、つかえるかの如くのダークヒロインな巫女。そうとまで思わせてくれる程の若林映子その風貌とその演技それらの素晴らしさなくしては絶対にダークファンタジーたりえなかったであろう。ガラモンの逆襲の義那道夫と同様に。さてさて総じて、もともこもない大怪獣なる、その陳腐なタイトルは、ひどく災いしてドゴラの宇宙知性が動物なみ怪獣なみと先入してしまいそうになる。たしかに劇中ドゴラの振る舞いはただの捕食行動っぽくはなってはいる。しかし遥かに人智を越えた暗黒宇宙の邪神スケールの知性。そんなヤバい何かが、ドゴラの背後に感じられはしないだろうか。宇宙細胞なるものが、われわれの宇宙の原子や分子で構成されているとは限らない。未知の宇宙の暗黒物質や反物質で構成されているかもしれないのだ。そして、それはそれ自身、精神と物質未分化の運動原理かもしれないのだ。怪獣では片付けられないような何かかもしれないのだ。ドゴラのカタチに使徒な気配を感じる方ならば是非。一度一歩踏み込んで世にも香ばしいダークファンタジー臭を禍々しくも本作の端々に強引にでも嗅いでみるのも一興かも。とにかく、このドゴラと、その物語には古代生物っぽい東宝怪獣を越えて既にウルトラqな孤高のモダンさが、うかがえ筆者は今見ても、ちっとも古さを感じないのだ。むしろ新しい。

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