2019年1月10日木曜日

地球に落ちて来た男

本作の原作脚色はといえば。しっかりと経済小説しておるし起業家サクセスストーリーのポイントもちゃんとおさえ。個性的なメンメン弁護士オリバーや大学教授ブライスそして宇宙人ニュートンによる巨大新興企業ワールドエンタープライズその盛衰それらをてぎわよくていねいにえがこうとしている。それはたしかだ。登場するお茶目な運転手つき社用車もたのしいし暗躍する国家がらみの対抗勢力かれらとの攻防にしたっていたってスリリングだし。しかし感覚派監督ニコラスローグはというと。そうしたよくできた職人的脚本にそった波瀾万丈にドラマチックなあつい正統派大悲恋大河ロマン風演出からはどうやらはなれようはなれようとしているようで。どちらかというとダメセレブ同士の退廃的でズブズブななんにもおこらない腐縁すれちがいメロドラマそっちのほうを志向している。よって脚本と演出においてへんな解離がおこり全体がギクシャク。それが本作を一見ゲージツっぽく難解にみせている。これはデヴィッドボウイ自身のアーティストイメージにもおなじことがいえる。ボウイは一見ロッカーなビジネスマンミックジャガーとはちがう。ましてやゲージツ家でもない。本作のラストシーンをみよ。スターじゃない。ジギースターダストでもない。時代おくれなただのスターダスト。このズタボロさ。かっこよすぎ。さてそしてついにオリバーはころされニュートンは国家に拉致されてしまう。しかしバラバラになりそうになった会社や青春の仲間たちを維持せんがためとマドンナであるメリールー。えんずるはあのアメリカングラフィティーのキャンディークラーク。彼女は意図的に科学者と所帯をもつ。そこにはニュートンにたいする純愛がふかくふかくきざみこまれている。ブライスはブライスでミュージシャンにまでおちぶれたニュートンを必死でさがしあてる。ここにきて一見難解にみえていた本作。いかにもストレートかつシンプル。すばらしい腐縁メロドラマ。かつダメセレブ群像賛歌。で。同時に。あのアメリカングラフィティーにおとらずの。さわやかで。せつなすぎる青春映画その大傑作。

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