2018年6月19日火曜日

吸血地獄

本作怪奇大作戦吸血地獄。ニーナの朝倉家の屋敷をひとつのディストピア社会になぞらえるとまた別の側面がみえてくる。朝倉家の屋敷の敷地はそうとうに広大で最初に巡回中の警官がおそわれるところからみてもアメリカ郊外型高級住宅街的なクローズドでゲーテッドなオーバーセキュリティー環境だとおもわれる。庭での鑑識風景がながまわしのワンシーンワンカットでとられていてその広大さがうまく表現されている。ニーナは一種の愛玩用性奴隷ロボット。レプリカントのような存在なのかもしれない。一寸表現過激すぎだが。だから不老不死プログラムがその身に設定されていた。吸血体質はそのプログラムのバグだ。周作とともにドラッグやスポーツカーというささやかな若者の武器のチカラによって屋敷からの逃亡をはかるも。所詮。義父によって屋敷に蹂躙されどこまでも管理される宿命的存在。後半のホテルにしても義父のもちものにちがいない。吉原炎上や家畜人ヤプーをおもいおこせばよい。はなれ瞽女おりんや必殺仕置人第一話でもよい。あと原田美枝子版地獄とか。そんなかなしい女の物語ともとれる本作。あの名作映画浮雲にもにて。そして。矢吹健の暗黒演歌。あなたのブルースのプロモーションビデオにでもつかえそうなアダルトなおもむきの後半。義母には。強権な義父にかしずきつつもどこかニーナのかなしい身の上にたいしての。複雑な嫉妬や屈折した同情がかいまみえる。警官の拳銃をうばおうとしたところなど。南のはての島にまでにげきったニーナと周作の二人だったが。世界はどうやらもはやどこまでも屋敷が自己増殖遍在化したような管理社会。ディストピア化してしまっており二人にいき場はなかった。よごれた血ばかりがはてしなく海をそめていく。もし二人のあいだにあかん坊でもできていれば新猿の惑星や赤ちゃんよ永遠になどのようなテイストも加味されたことであろう。

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