2017年2月16日木曜日

零下140度の対決

八甲田山的な軍隊物の緊張感で、ダンの彷徨と原子炉復旧の苛酷な作業のニホンバシラで物語は始まる。かたや幻想的な白一色の吹雪、かたやリアルに怒号の飛び交う地下の暗闇、対位法な画面の魅力は話に迫力を与えている。しかし魅力の本質は、そこではない。ホークと飛行怪獣の空中戦から察するに、寒波は想像以上の広範囲に及んでいる。これは、もはや局地的危機シミュレーションを越えて世界滅亡スケールなニュアンスだ。セブン後半に於ける金城作品。ノンマルト、蒸発都市、そして最終話。すべて、そうしたニュアンスがある。そこが最大の魅力だ。地球ナショナリズムな軍事ミッションっぽい物の方が好かれやすい特撮ファン界でのセブン。そうした傾向の中で金城作品は、あくまでも前作ウルトラマン的な、明朗で壮大な宇宙絶対平和をテーマとして貫こうとしている。また勧善懲悪ぎみな軍事ミッション物系にしても、金城の筆になると、カッコいいだけでは収まらないスケールの大きさで、時にトンデモなどと揶揄されたりさえもする。しかし、それも、今で言うセカイ系などと整理同一視される波に押し流されない、気骨とでも言うか、切実な祈り、さえ、そこ、に込められているがゆえの、暴走、で、あって。だから彼の作風は時と共に破綻の苦汁さえ滲ませていった。しかし金城は苦汁を滲ませる事を厭わなかった。最終話には、苦汁をも込みで、それでも透明な絶対平和のユートピアを見ようと、意志のような物を感じる。その為に妙にカタニチカラが宿ってしまっている。そのチカラを偶然が祝福し、名作、に仕上がっている、というわけでもない。しかし、だからこそ、作家性の強く出た、極めて稀有で豪快に大団円な完結編となっている。本作は、その最終話に繋がる、やはり、稀有な分水嶺。

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