2016年8月18日木曜日

あけてくれ!

これは、ヤバい。一平の存在し得ないパラレル・ワールドに、淳と由利子は、車ごと迷い込んでしまったに違いない。それも、自身の居る世界を、よりユートピアへと見せ掛ける為に、友野が、意図的に造り上げたディストピア・ニセ東京へと。二人は、確かに、迷い込んでしまったのだ。そうとしか思えない。オープニング。現実の世界に置き去りにされた一平が、二人の去った先に見る、あのタイトル・バック。そこに映し出された東京の夜景は、高速道路だらけで、その上を電車が飛び回っているし、遠景のビルも何やら炎上か、発光しているようで、正に、ディストピア。ごく選ばれた者しか電車には乗れない、そんな地上に電車が無くなってしまいつつある、そんな世界。一ノ谷も、嘗ての一ノ谷とは、どこか違う。何よりも、研究所の中の覗き窓のある座敷牢に、被害者の女性を残酷にも、閉じ込めてしまったりしているではないか。あの穏健な一ノ谷と、同一人物とは、どうしても思えない、非情な所業である。そして、この東京が、ディストピアたる最大の証拠として、二人の乗ったエンストした車から流れるカー・ラジオ。音楽など一切流れず、まるで、戒厳令下かと思わせる程。難民の車の交通渋滞情報ばかりなのである。このディストピア・ニセ東京からは、最早、誰も出て行くことが出来ないのだ。さて、二人は、車を後にして、淳の事務所に行くが、そこには、一平らしき人影は、あるには、あるのだが、二人からも、一平からも、互いが、まるで見えていないかの如き、不気味な演出が施されている。正にパラレルワールド。只、救いなのは、今まで、一平は、影も形も無くなってしまっていたのだが、こうして、今は、両世界が繋がりかけ始めている。そんな風にとれるからだ。二人は、この後、また一平の認識できる世界に戻れるであろう。めでたしめでたし。しかし、いずれにしても友野という奴は、時空を自由に操れる、とんでもない奴だということ。友野の顔の入った著書だか書類だかは、街中、至るところに神出鬼没で、そして、あれは、どう見ても、黒いタブレット端末に見えてしまう。1984年のビッグ・ブラザーのテレ・スクリーンめいて。

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