2019年11月10日日曜日

吸血地獄

本作ニーナを完全主人公の物語としてみなおすととんでもないものがみえてくる。主人公役が外人俳優で。こちらからの感情移入がしにくくなるようにわざわざとしてある。という観点から。まるで人形浄瑠璃の心中モノや歌舞伎の四谷怪談そんな中世不思議グランギニョル人形音楽劇な人工様式美の色彩を帯びてくる。といおうとおもえばいえるからだ。ドラッグ地獄に堕ちていくグラサンロッカーな飼い主を必死で守る背後霊守護神ペットの物語とでもさえいおうか。そうハチ公忠犬物語のようでさえもある。ラスト。崖の上での。周作の手首から血をすうニーナ。あまりにも哀れ。というより。あれは健気の姿なのではないだろうか。主人公の傷を舐めるセラピードッグのような。そんな風にみえてきはしないだろうか。それを突き落とすようにして自らも身をなげる周作。そんな愚かな周作さえ赦すニーナ。そう本作はあのフェリーニの道なのだ。ニーナの顔が元にもどるのは周作への憐れみ。あれはもはやニーナは菩薩となったアカシ。ニーナはジェルソミーナ。映画浮雲。森の妖精の化身がベトナムから日本についてきて戦争に心身傷ついた男たちに尽くし尽くしきったように。本作はポーランドからついてきた少女吸血鬼の無垢。イノセントを描ききっている。死んでも死ねずどこまでも周作のあとをけなげに付き添ったニーナ。周作の名を呼ぶニーナの声が耳からはなれない。

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