2019年4月13日土曜日

赤んぼ少女

とにかく山のホラーとして材料はここにととのいまくった。さてでだしも快調。嵐の山中でのエンコ。たどりついたのは古井戸のある廃園にかこまれた。たかい塔のある洋館大屋敷。まわりには広大な野犬群よけの高圧電流柵がはりめぐらされている。不気味な侍女。夜毎ひびきわたる。いるはずのない赤んぼのなき声。狂気の女主人と弱気な亭主。前半戦はこれらがゆったりとしたハーモニーでそこはかとない設定当時の火垂るの墓な。やけ跡混沌のやるせない闇をひきずり。なつかしの昭和三十年代ゴシックホラー感にひたれる。ところが後半戦となるといきなり高圧電流柵をとびこえ。イケメンヒーロー登場。そう今風に斎藤工の大活躍編ジェットコースタームービーとなってしまう。その落差は目眩さえしそう。あくまでよい意味でだ。これこそ当監督の本領発揮なのでそれはそれでよいのである。このヒーローはまるでロボコップのようなサイボーグにちがいないからだ。そのグロテスクバイオレンスさじつによろしい。肩から完全に腕をうしないながらも大量出血さえもない。何度もいきかえるしのこされた腕の力も人間ばなれしていて少女を井戸からかるがるひきあげ救出する。その井戸の底は怪物のすむ部屋へとつながっていた。そんな赤んぼ少女とのバトルアトラクションはえんえんとつづく。しまいにはフランケンシュタイン対地底怪獣のように山全体が大規模な山火事にまでなって火の渦にかこまれつつのたたかいとなる。かくして後半担当主人公の斎藤工と前半担当主人公の水沢奈子はかろうじて勝利。敗北した女主人浅野温子と怪獣タマミは業火のなかへと崇高に身をとうずるのであった。

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